●セカンドレグをホームで戦うことのアドバンテージは?

チャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦、ベンフィカとのファーストレグを1−0で落としたドルトムント。スタジアムを埋めたサポーターはキックオフ前からいつも以上に興奮状態だと感じた。こういうビッグマッチになると記者席が足りず、オブザーバーシートとして、メインスタンド観客席のチケットを割り当てられるケースがある。2015年2月のユヴェントス戦のときと同様(ファーストレグ2−1、セカンドレグ0−3)、この日も年配のサポーターに囲まれ、試合を見た。

アウェイで1−2と善戦して迎えたユヴェントス戦前の観客席は堅さや緊張感が漂っていた。しかし、アウェイを0−1と落したこの日はサポーターにもあとが無いという切迫感みたいなものがあったのか、「声の限り力を送ろう!」「俺たち私たちがついているぞ!」という想いとともに、「必死さ」が漂っているようにも感じた。

キックオフすると座って観るのが欧州での基本的なマナー。にもかかわらず、開始直後にベンフィカが自陣に侵入し「かけた」だけで、サポーターは一斉に立ち上がり、手を叩き、声を張り上げていた。

4分にオーバメヤンが先制点を決めると、サポーターはいうに及ばず、ボールボーイたちもゴール裏の狭いスペースで肩を組み飛び上がっていた。

しかし、その後も観客の熱気にあおられるようにアグレッシブに攻めたが、ドルトムントは追加点を奪えない。

時間経過とともに、それまではほとんど触ることすらできなかったボールをベンフィカの選手が操り始めた。ベンフィカのゴールはすなわちアウェイゴールなので、2試合の得点で並んだ場合、大きな力を持つ。初戦を0−1で落としたドルトムントは、ベンフィカにゴールを許せば、それをさらに上回るゴールが必要だ。たとえ、2−1で勝ったとしても、2試合総得点2−2。アウェイゴール1のベンフィカに軍配はあがる。逆にベンフィカは2失点したとしても、1得点で勝ち上がれるわけだ。ドルトムントは、1失点すれば、3点奪わないと勝てないという現実を背負っていた。

しかし、追加点が決まらない。その焦燥感がプレッシャーとなり、ドルトムントの選手たちのプレーに荒さが目立ち、勢いがなくなっていく。

これは昨年のJリーグチャンピオンシップと似た構図かもしれない。
ファーストレグを0−1で落したうえに、セカンドレグでは先制点を許してしまった鹿島アントラーズ。しかし、「僕たちは2得点以上しないと勝てない。1失点しても動揺はなかった」と柴崎岳は語っていた。そして彼らは2得点を決めて、タイトル獲得に成功。

セカンドレグをホームで戦うことが“アドバンテージ”になるというのは、果たして本当だろうか? アウェイゴール方式のもとで、セカンドレグがホームであることの有利性に疑問を抱きながら、ハーフタイムを迎える。

後半に訪れたビッグチャンスを続けざまに外したドルトムント。観客の大きなため息と叱咤の声が入り混じるスタンド。しかしゲームは途切れることなく、ドルトムントがボールをキープする。

59分、プリシッチが待望の追加点を決めた。繋がった希望を目にしたサポーターが口々に叫んだ。祈るように選手の名を呼ぶ者もいれば、悲鳴のような歓声もあった。

爆発した歓喜はリスタートになっても収まることなく、それ以上の熱を発し、ピッチにいる選手たちをあと押しした。これこそがホームアドバンテージだと思った瞬間、61分オーバメヤンのゴールが決まる。

こうなれば、試合はドルトムントのものだ。オーバメヤンがハットトリックを記録し、ドルトムントは4−0と完勝。2試合合計4−1でベスト8に進出した。

同時刻にスペインでも、終了間際にホームチームが得点し、世紀の大逆転劇を見せている。やはり、セカンドレグのホームは有利なのだろうか。
ちなみに、3月7日の2試合はともにアウェイチームが勝ち上がっている。

[取材・文 寺野典子]