J1の降格ゾーンで低迷する浦和レッズは、ユースを指揮していた堀孝史氏をトップチームの監督に昇格させて、ラスト5試合を戦うことになった。橋本光夫社長は「今すぐにでも手腕を発揮できる」と高評価での抜擢を強調していたという。

確かに浦和全体の歴史を振り返っても、3年前に掘監督の指揮下で高円宮杯U18を制したユースチームは、最も高い次元の連動を見せ、その中で個性が輝いていた。翌年から監督に就任するフィンケは、この時の主力を次々にトップに上げていったわけだから、本来ならこの時点で堀監督をヘッドコーチに据え、時期を見て後任監督に抜擢するなどの発想があって然るべきだった。

それがこんな剣が峰で唐突に指揮権を託しても、出来ることは限られている。ましてシーズン終盤になって、監督、コーチを揃ってトップに持っていかれたユースの選手たちにとっては迷惑千万な話だ。何か手を打たなければという切迫感から生まれた人事なのだろうが、いかにも場当たり的で、適切な中長期的展望を欠いたツケが一気に露呈した感が強い。

浦和レッズは、もはや三菱の持ち物ではなく、日本サッカー全体の財産と言ってもいい。無数の老若男女がクラブカラーの赤を身につけて連なり、スタジアムへ向かう途中から歌声を挙げる。こんな光景が見られるのは、埼玉スタジアム周辺しかなかった。レッズの観客動員急落は、リーグ全体の危機を意味する。

だがJリーグ開幕当初のお荷物状態から、一転して王座に上り詰めていくという劇的な展開が熱狂を吸い寄せる一方で、クラブの骨格となる方向性はなかなか定まらず、右往左往を繰り返した。

監督が代わる度に志向も変化して選手たちが戸惑い、2代続けて外部からGMを招聘してみたものの結果が出ず、社長はサッカーの見識に照らせばまるで理に適わない発言を繰り返した。

本来浦和は、最大規模のクラブとして、Jリーグを牽引するべき立場にある。そしてそのためには、クラブの中で正しい航路図を描き、強力なリーダーシップを発揮できる人材が要る。もしそれが日本人では難しければ、海外から招聘する方法もあるだろう。いずれにしても浦和の現状を考えれば、選手の補強以上に、そこに最大の投資を検討するべきかもしれない。

今度こそ中途半端な改革では、ファンも納得しないだろう。もしJ1残留を果たしたとしても、クラブスタッフや関係者は、真剣に日本サッカーの中での重責を噛み締め、掛け値なしの有識者を軸に、抜本的な見直しを図るべきである。

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