先日行われたチャンピオンズリーグのグループリーグ戦で、バルセロナがホームでロシアのルビン・カザンに負けた。ほとんど攻める気のないルビン・カザンの守備を崩すのに手こずっているうちに、カウンターを決められたんだ。
これはいわゆるジャイアントキリングで、両者の力の差や、試合が行われた場所がカンプノウであることを考えれば、まさに奇跡といえるものだね。96年アトランタ五輪の「マイアミの奇跡」に近いものがある。まるで宝くじが当たったかのような結果だが、サッカーにおいてはありえないことではない。

日本代表がW杯のような大会に出る場合、自分たちより格上の相手を倒さなければならない。ベスト4を目指すというのならなおさらだ。しかし「マイアミの奇跡」やルビン・カザンの勝利は、サッカーの持つ特性が引き起こした偶然に近いもので、宝くじはそうそう当たらない。
狙ってジャイアントキリングを起こすには、やはりそれなりの力が必要であり、そのためには日々コツコツと総合的なレベルアップを図っていかなければならない。可能性を高める努力を、上昇線を描きながら続けていく必要があるんだ。

そう考えたときに、今の日本サッカー界からジャイアントキリングを達成しうる力は感じられない。これは代表監督どうこうの話ではない。
顕著なのはJリーグだ。開幕して17年、ずっと見てきた人ならわかると思うが、今は低迷期と呼べるほどレベルが沈下している。やってくる外国人選手のレベルは低下し、いいブラジル人がいても中東に引き抜かれ、埋め合わせを国内クラブから強奪するなんていうことも起きた。足し算ではなく引き算だ。
石川も岡崎も得点ランキングでがんばっていて、マスコミに騒がれているけど、他にいないことの方が大騒ぎすべき問題じゃないか?

同じ格上相手の勝利でも、ルビン・カザンがバルセロナに勝ったのと、松本山雅FCが浦和レッズに勝ったのとでは、その質が違う。前者は「奇跡」と呼べるものだけど、後者は番狂わせではあっても「奇跡」ではなかった。日本の“ビッグクラブ”は、いまやどこに負けてもおかしくない。順位表の団子状態が、Jリーグのレベル低下をなにより証明している。

企業スポーツという体質が変わっていないことで、不況の煽りをもろに受けている。というより、バブルがはじけた時点でもうサッカー界の下降線は始まっていた。2002年W杯の特需にあぐらをかいた、そのツケも来ている。
日本サッカーを上昇線に戻すために、協会やJリーグは改めて考え直してほしいね。まずは、自分たちの体質を。(了)
 

セルジオ越後 (サッカー解説者) 
18歳でサンパウロの名門クラブ「コリンチャンス」とプロ契約。ブラジル代表候補にも選ばれる。1972年来日。藤和(とうわ)不動産サッカー部(現:湘南ベルマーレ)でゲームメーカーとして貢献。魔術師のようなテクニックと戦術眼で日本のサッカーファンを魅了。1978年より(財)日本サッカー協会公認「さわやかサッカー教室」(現在:アクエリアスサッカークリニック)認定指導員として全国各地青少年のサッカー指導。現在までに1000回以上の教室で延べ60万人以上の 人々にサッカーの魅力を伝えてきた。辛辣で辛口な内容のユニークな話しぶり にファンも多く、各地の講演活動も好評。現在は日光アイスバックス シニアディレクターとしても精力的に活動中

●主な活動 テレビ朝日:サッカー日本代表戦解説出演「やべっちF.C.」「Get Sports」  日本テレビ:「ズームイン!!SUPER」出演中 日刊スポーツ:「ちゃんとサッカーしなさい」連載中 週刊サッカーダイジェスト:「天国と地獄」毎週火曜日発売 連 載中 週刊プレイボーイ:「一蹴両断!」連載中 モバイルサイト FOOTBALL@NIPPON:「越後録」連載中