9月27日、欧州チャンピンズリーグ第2節。レスターは、ホームにポルトを迎えた。

奇跡のリーグ優勝を遂げたレスターにとって、チャンピンズリーグ出場もまた“ミラクル”の続きなのだろう。キックオフ前から、スタンドを埋めたサポーターは非常に高いテンションで盛り上がっていた。しかも第1節のブルージュ戦に勝利し、グループリーグ1位につけている。その時はベンチ外だった岡崎慎司はベンチスタート。9月24日のマンチェスターユナイテッド戦で1−4と大敗したにも関わらず、レスターの先発メンバーはその試合と同じだった。

キックオフ直後からポルトは、低い位置からのカウンター攻撃でレスターのゴールへ迫った。戦況はポルト有利かと思われたが、数少ない攻撃チャンスでレスターが先制点をマーク。迎えた後半はじりじりとポルトに押し込まれて、DFラインが深く下がってしまう。セカンドボールも拾えず、防戦一方のレスターだったが、シュート精度の低いポルトの攻撃に救われて、1−0と逃げ切った。岡崎はこの日も出場することはなかった。

9月14日のブルージュ戦でベンチ外となった岡崎は、その後リーグ戦ではベンチ入りするものの出場機会は訪れないままだ。9月20日のリーグカップ対チェルシー戦で2ゴールを決めたものの、アルジェリア代表のスリマリに先発ポジションを奪われた状況は変わらない。

「今日の試合のような展開だったら、僕が出てたらチームは安定したと思う。前から守備ができれば、もっとうまい形で試合を進められていたはずだから」
試合後は大きなため息と苦笑いを浮かべて、悔しそうに話す岡崎。

「チェルシー戦のゴールも試合に負けたからか、なかったことになっていますね(笑)。考えてみればプレシーズンマッチでも先発で起用されなかった。(開幕戦の)ハルシティで負けて、守備が安定しないということで、先発に復帰できたけど、リヴァプール戦(9月10日)で45分で代えられてから、この状況が続いている。『なんでなんや』とも思うけれど、今は監督の構想に入ってないなという感じもする。そういう状況は理解しているし、これを飲みこんで我慢するしかない。今のチームの戦い方だと勝ったり、負けたりを繰り返すと思う。昨季のような戦い方ができていないけれど、逆に言ったら、監督は昨季のような戦い方には限界があると考えているのかもしれない。もっと個の力でゴールをこじ開けたいと」

レスターは今季スリマリ、ムサというふたりのFWも獲得した。どちらも高額な移籍金を支払った大型補強である。そういうライバルたちとの競争を続ける岡崎だが、「チャンスは必ず来ると思う」と自信を漲らせた。自分が必要になる場面が訪れると考えているからこそ、焦れずに我慢することが重要だと話す。
「焦ったり、弱気になったら、自信だけが揺らいでしまう。強い気持ちでいることが大事」

この日は、レスターだけでなく、ドルトムント、セビージャと日本人選手が所属するクラブがチャンピオンズリーグを戦ったが、香川はベンチ外、清武はベンチ入りしたものの出場できなかった。
チャンピオンズリーグだけにとどまらず、試合出場機会のない日本代表選手は多い。そんな状況について岡崎は次のように話した。

「正直、日本人選手というのはそういう立ち位置なんですよね。試合に出られないでいるのは僕だけじゃなくて、いろんなタイミングでこういうふうになっているけれど、別に驚くことでもないんじゃないかと思う。今までがわりと良い感じでみんなが試合に出られていたけれど、冷静に考えたら、ビッグチームの中心にいた選手ってほとんどいないと思うんですよね。日本人選手はまだそう簡単にこっちで試合に出続けることはできない。だからまだまだ地道に日本人プレーヤーがこっち(欧州)でもがいて、何年、何十年ともがいて、『日本ってサッカーうまい国だ』と思われるんだと思います。結局いつも外されるのは僕ら日本人選手だし、チームのことを考えてプレーしているのは僕たちだと自信をもって言えるけれど、フィジカルが強いとかスピードがあるとか、点が獲れるとか、そういう見た目が派手な選手、個の能力の高い選手が出てくると、日本人選手は使われなくなってしまう。でも、ここでどれだけ粘れるかだと思うし、この状況で僕は粘りたいですね」

試合に出ていないと一言でまとめることができる欧州組の選手も、その理由は様々だ。ただ岡崎の言うように日本人選手が「代えやすい」として認識されているのも事実だろう。唯一無二の存在として輝くために、“足りない”ものがまだまだあるということだ。

岡崎自身もラニエリ監督の“認識”を変える必要性を強く感じている。
「僕は昨季5点しか取れていない。だから、FWをふたりも補強したんだと思う。自分がその認識を変えるためにやるべきことはわかっているから」
それはFWとしての脅威を身に着けること。すなわち得点である。

試合に出なければ、スコアを残すことはできない。昨シーズンはチームを安定させ、得点機を生み出す仕事を評価されたのが、現状、守備を固めて逃げ切る状況においても岡崎は選んではもらえていない。ベンチ入りできたからと言って、ベンチ外よりもましだと安心するわけにはいかない。苦境に立たされていることは明らかだが、ここで迷ってしまうことの危険性を岡崎は強く感じているようだ。

「続けるだけですね、自分が目指すFWの形を突き詰めて、それが好きだと監督が言ってくれて、(昨季)僕は使われたわけで。それをやっぱり貫いて、1年間を戦い抜くということだと思います。まあ、しょうがないですけど、これが今の僕の現在地だから」

チャンピオンズリーグ第2節が終わり、レスターは唯一の2連勝。ポイント6を手にした。決勝トーナメント進出の可能性も高い。レスターのミラクルは続いているが、リーグ戦では苦しい戦いが続いている。認識を変えて、序列を崩すための特効薬はないのかもしれない。だからこそ、ブレずに邁進するしかない。


[取材・文 寺野典子]