左から来たパスを右足でトラップ。クルリとターン。正面に立つDFとゴールキーパーの間、角度もスペースもない状況で大迫が左足で放ったシュートがゴールネットを揺らした瞬間、スタジアムの観客席は総立ち。両手を高くあげ、気持ちの良い笑顔でそれに応える大迫の姿が青い空に映えていた。

「あぁいう形は練習でもイメージしているし、落ち着いて、気持ち良く打てました」

開始早々に先制点を許したケルンは大迫のゴールで同点に追いついた。



今季開幕から3勝1分けの4戦負けなしで、2位と好成績を残しているケルン。9月25日第5節、昇格組ながらドルトムントを破るなど2勝2分と躍進しているライプチヒをホームに迎えた一戦は、ケルンのサポーターがライプチヒの選手バスのスタジアム到着を妨害したこともあり、キックオフは15分遅れた。
 
開幕戦こそ途中出場だったが、その後は先発に定着し、この日4戦連続スタメンとなった大迫が2トップの1角に立つ。4分にはさっそくミドルシュートを放った。5分に先制点を決めたのはライプチヒだったが、7分には大迫が中央で楔のパスを受けて、ターンし、前線のモデストへパスを送る。これはオフサイドになってしまったが、その後も大迫はパスを引き出すプレーで、ケルンの攻撃を演出していた。

ディフェンダーもサイドの選手も、ボールを持つと大迫を探しているのがわかる。そして、大迫が指し示す場所へパスを出すのだ。大迫の魅力である動き出しの良さが存分に発揮されていた。味方の近くで相手ディフェンダーを引き付ける。そしていったんボールが中央へ渡るとすかさず縦に走りだし、ディフェンダーを置き去りにする。
彼の動きとパサーとのタイミングが合わず、オフサイドになるシーンもあったけれど、大迫のプレーからはフィジカルコンディションだけでなく、ゲーム勘も冴えているのが伝わってくる。
 
2月、1トップのシステムのなかで、慣れない左アウトサイドで起用され、まったく自身の武器を発揮できず、守備に追われていた大迫。足りない穴を埋めるために便利に起用されている。そんなケルンで続けていくのは難しいのではないかと、正直思った。きっと移籍するだろう、移籍をしたほうが良いんじゃないかと考えていた。しかし、彼はチームに残留し、同じ監督のもとで、主役級の活躍をしている。

「今年2トップでやるという感じになってから、フォワードとして見ていてくれる。ほんとに今シーズンは良いトレーニングキャンプができたし、そのなかで、ボールを自分のところに引き込めるようになった。代表戦のある代表ウィークもチームでたくさん練習ができ、たくさん試合にでているから、自分にとってプラスになっている」

昨季、なかなかケルンで試合に出られず、日本代表の招集からも遠ざかっている大迫。記者が質問をする前に、自らが「代表に招集されていない現実」について話し始めた。

「今は代表のことはまったく考えていないですし、ケルンでやることが一番なので、これしか言えないですけど。ケルンでやることに一番やりがいを感じているので、代表はまったく気にしていないですね」
時折笑顔を見せながら、きっぱりと語った。クラブでのプレーに集中することで、監督からの信頼度も高まっている。

「監督は常に『僕の好きなようにやれ』と言ってくれますし、『お前の力を信じている』というふうに声をかけてくれるので、すごくありがたい。常に良い言葉をかけてもらっているのは事実だし。常にプラスにプラスにというふうに考えてくれているので、これからもっともっと期待に応えていきたい」
 
ミッドウィークに試合があったせいか、後半は両チームともに精彩を欠いた内容となり、1−1のまま試合は終了。72分にベンチへ下がる大迫には、盛大なスタンディングオベーションが贈られた。ドイツ人記者が大迫を囲む。彼へ寄せられる期待は大きい。

巧さを見せることはできた。それでポジションも手に入れた。チームも勝ち点を重ねている。大迫が放つオーラは清々しく、充実感にあふれていた。

しかし、ここから上へ行くためには、ゴールという数字が必要になってくる。

「2トップになるとゴールに対する勢いや、相手に対する怖さを出さないと生き残れない。まずはそこを出すことを考えている。まだまだこれから。気を抜いたらすぐに代えられてしまう。もっともっと積み重ねて。もっともっとステップアップしていきたい」

次節はバイエルン戦。フォワードとして何ができるのか? その挑戦が楽しみだ。

[取材・文 寺野典子]