_SX350_BO1,204,203,200_ Footbal Weekly編集部では、『日本人に教えたい 戦術的ピリオダイゼーション入門』(東邦出版)の翻訳を手がけた。編集部で翻訳というのは、いささか奇異に感じられるかもしれないが、本書は実践トレーニングなどにもわたっており、単純に翻訳をすれば良いというものではないので、幾人かの人の手を煩わせることとなり、最終的な責任は編集部にあるという形で、訳者名として表記している。
 モウリーニョ、グアルディラ、クロップ、ファン・ハールをはじめとするトップクラスの指導者が実際に練習で用いている63種類ものトレーニングに関しては、V・ファーレン長崎のアカデミーダイレクター、寺峰輝さんに翻訳のチェックをお願いした。


 3回にわたってその内容の一部を掲載するが、1回目は「戦術的ピリオダイゼーションとは何か」について説明した部分を紹介する。


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「戦術的ピリオダイゼーション」とは

「ピリオダイゼーション」という言葉は、「トレーニングの内容や強度を年間のなかでの時期、期間に応じて変える」という意味で、「期分け」とも呼ばれています。
 そして、「戦術的ピリオダイゼーション」となると、簡単に言えば「サッカーはサッカー」であるという考え方です。「サッカーはサッカーをトレーニングすることによってのみ上達する」のであって、サッカーを4つの要素に分けて捉えて(サッカー=テクニック+戦術+フィジカル+メンタル)、それぞれを別々にトレーニングすることはサッカーの上達・強化に結びつかないというものです。

 サッカーのプレーでは常に“状況判断”が求められます。上に挙げた4つの要素が常に密接に関わりながら、サッカーは行われているのです。テクニックを伸ばすために相手のいない状態でトレーニングをしても、そこには状況判断が含まれていないため、サッカーが上手くなることはありません。ボールなしで速く走れるようになってもサッカーのゲームのなかで速くプレーできるとはかぎりませんし、また頭のなかでいかに戦術的にサッカーへの理解が向上しても、いいプレーができるとはかぎりません。

 なぜならサッカーには状況判断があり、テクニック、フィジカル、そして行動に移せるメンタルの強さがないとプレーができないからなのです。いくら最強の武器を持っていても、それを使う勇気がなければならないし、使い方を知らなければ使えない、そもそもその武器を持つ体力がなければ武器も役には立ちません。 

 こういった考え方はサッカーだけにかぎりません。格闘技の世界でも筋力が優れている選手が勝者になるわけではない。相手との駆け引き、タイミング、テクニック、試合の流れを含め状況判断が優れている選手が勝者になります。さらに選手の自立(自ら考え、自らリスクを負い、自らの判断での行動等)も密接に関わってきます。
 だからこそサッカーは、“相手のいる状況で判断を伴う”なかでトレーニングする必要があるという考え方に至ったのです。

 サッカーを魚にたとえるならば、魚を一度、すべての部位にバラバラにした後、もとに戻しても、もとには戻らない。そこには目には見えませんが“生命”という最も大切なものが失われてしまうからです。
 まさに戦術的ピリオダイゼーションとはこういった“サッカーの生命”を大切にした考え方と言えるのです。

(第2回につづく)