29分。サイドからのクロスに競り勝ち、GKがはじいたところを自らゴールにプッシュした大阪体育大学の澤上竜二は、日本では珍しいタイプのFWだ。

8日に行われた第64回全日本大学サッカー選手権大会(インカレ2015)IPU・環太平洋大学戦でも、得点を奪うまでは圧倒的な存在感を発揮していた訳ではない。2年前に澤上を初めて見た時も、最初に目に留まったのは伊佐耕平(現:大分トリニータ)だった。

それでも、チームのリズムが悪い時や、重要な局面で必ず澤上は得点を奪う。大阪体育大学の坂本康博総監督は、「シュートで流れを変えられる選手」と評したが、言い得て妙だと思う。その才能は、類稀なものだ。

だが澤上は、今後はターゲットマンとしての役割も求められる。
実際には「2トップだとより活きるタイプ」(坂本総監督)だが、リオ五輪を目指すU-22日本代表候補の合宿でも1トップとして試されていた。

サイドからのクロスに強く、胸から下のボールはしっかりと収める澤上も、バックラインからのアバウトな空中戦を完璧に味方に繋ぐには至らない。「そこは自分の課題。空中戦でも勝てなければ、上には残れない。単純な身長勝負ではなく、タイミングなど競り方を考えたい」と今大会での更なるレベルアップを誓う。

“スターシステム”のある日本では、大阪体育大学が勝ち進むのと比例するように、澤上への注目度は高まるだろう。ただ、それが悪いことだと思わない。来年、セレッソ大阪に入団することが決まっている澤上にとって、騒がれ、プレッシャーを受ける経験は、きっと活きるはずだ。

本人も、「注目されて激しいマークが来れば周りが空くし、それで周りが点を取れば、自分にもスペースが出来る」と受け入れ、そんな中でも「チームの勝利のために、一試合複数得点をとる」と宣言している。

多くのJリーガーと関わり、近年では各メディアから注目を浴びている動作解析のプロフェッショナル・夏嶋隆氏も、澤上を「すごく頭がいい。たとえば、競り合いの指導で“こういう時は右手をあげるように”と指導したとします。それがよく分からず、なんとなくプレーする選手が多い中、彼は分からないことをそのままにせず“何でですか?”と聞き返し、理解しようとしてきました。自分で納得してから、その効果を考えて、プレーに消化させられる。」(澤上インタビュー全文は『ロダンのポーズで首と肩の痛みが治る!』)と太鼓判を押す。

その澤上の次戦は、今週10日木曜日、西葛西で行われる慶応義塾大学戦である。次戦ではターゲットマンとしての内容と、複数得点という結果の両方をみせてほしい。(了)


◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
FootballWeeklyコラムニスト。『サッカーダイジェスト』など多数の媒体に寄稿。著書に『SOCCER KOZO』(ガイドワークス)編集部と作った『足ゆび力 ~つま先を使うだけで一生健康でいられる~』、家本政明氏にもご協力頂いた『ロダンのポーズで肩と首の痛みが治る!』(ぴあ)とベストセラー『足指を曲げるだけで腰痛は治る!』(ぴあ)。現在、『タグマ!』にて有料サイトの準備中。ツイッター:@FBRJ_JP。