まさに絶対に負けられない戦い―。
11月29日、J2・J3入れ替え戦のFC町田ゼルビア×大分トリニータの第1戦が行われた。

ホームの町田ゼルビアは序盤から主導権を握る。しかし、先制点を奪ったのは大分だった。22分、FKからキャプテンのダニエルが頭で合わせて貴重なアウェイゴールを手にする。その後、試合は動かず、このまま前半終了かと思われた45+2分。キャプテン李漢宰が競り勝ったボールが鈴木孝司の元に。鈴木が迷わず左足を振り抜き、「我々に勇気を与える同点ゴール」(相馬直樹監督)を叩き込んだ。

後半に入ると、試合は完全に町田ペースに。大分は、選手交代や町田対策がまったく機能せず、防戦一方となる。その流れで迎えた72分、鈴木が森村昂太と町田らしいパス交換から決勝ゴールを決めた。直後、相馬監督は李を呼び、ゲームプランを「このままでいい」と確認を行う。その李が強烈なキャプテンシーを発揮し、町田が危なげなく第一戦の勝利を手にした。

試合後、李は「J3の最終戦となった長野(パルセイロ)戦はハードな戦いで、プレッシャーもあった。ですが、今日の試合、立ち上がり入って、大分さんの勝ちたいっていう気持ちは長野さんほど感じなかった。それもあって、“これやれるな”と思いました。ただ、第二戦は、大分さんのホームなんで、同じことは起こらない。サッカーは難しいですから。(大分銀行ドームの芝は独特だが)気にならないです。どちらも同じ状態でやるので、それは言い訳にはならない。僕らは負けても、このままJ3に留まるだけ。でも、大分さんは、J3に落ちるというプレッシャーもある。僕もそのプレッシャーを経験したことがあって、思うようなプレーは出来なかった。そういう意味では、その利を活かし、僕らは自分たちのサッカーをやりきる。何度も言いますが、まだ何も成し得ていない」と試合を振り返った。

そんな李が、J2だけでなく、J1、さらにその先を見ているのは、前回取材していた時に聞いていた。「何もなしえていないと言いましたけど、けっして個人能力の低くない大分に対し、町田はJ3で展開していたのと同じ、自分たちのサッカーが出来た。これは自信を得たのでは?」と聞くと、「そうですね。自分たちは昇格するのはもちろんですけど、昇格した上で何が出来るのかも見据えている。そういう意味では、自身を持って挑みたいと思っています。相手にクリスティアーノロナウドやネイマールがいれば、名前を見ますよね。ピッチに立てば、名前でサッカーやる訳でもなければ、貰っているサラリーでサッカーする訳でもない。最低限は必要でも、必要以上のリスペクトは自らの価値を下げる。アウェイ大分戦は苦しい戦いになると思う。でも、J3で苦しい中でも勝ち点を積み上げてきたので、自信を持ってやっていきたい」と町田が手にした新たな自信をうかがわせた。

最後に二人の退場者が出たが、試合は決して荒れていなかったこと。木村博之主審が、妥当なレフェリングをみせたこと(詳細は審判批評)を付け加えておきたい。(了)


FC町田ゼルビア 1-2 大分トリニータ
22分:ダニエル(大分)
45+2分:鈴木孝司(町田)
72分:鈴木孝司(町田)
観客:8,629人


◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
『週刊審判批評』を運営。有料マガジンへの登録は審判取材の支えになります!著作に『レフェリング』(JVD)。著書に、SOCCER KOZO編集部との『足ゆび力』(ガイドワークス)。家本政明氏にもご協力頂いた『ロダンのポーズで肩と首の痛みが治る!』(ぴあ)とベストセラー『足指を曲げるだけで腰痛は治る!』(ぴあ)。ツイッター:@FBRJ_JP。