UEFA(欧州サッカー連盟)は2010年から、将来国際審判員としての活躍を見込める若手審判員(30歳程度まで)を集中的に研修させるプログラムとして、『CORE(Centre of Refereeing Excellence) Programme』を開催している。

実はこのプログラムに、トップレフェリーインストラクターの岡田正義氏、木村博之主審、田中利幸副審、平間亮副審が2012年に参加している。

岡田氏は、FIFA(国際サッカー連盟)とUEFAの違いを、「FIFAは全世界が対象なので、審判インストラクターたちも、レベルの高い国から、そうではない国まで指導しなければなりません。UEFAに加盟している国はサッカー、審判員のレベルが高い国が多いこともあり、研修内容も、FIFAよりもコンパクトで洗練されている感がありました」と分析する。つまり、よく言われる“判定基準の違い”は感じなかったということだ。一方で、UEFAのサイエンスの取り入れ方、審判員に対する予算のかけ方には驚いたという。

とは言え、このプログラムに参加した欧州の審判員も抜けていることはある。たとえば、イエローとレッドカードを同じポケットに入れていたらしく、岡田氏が気付き、「それは、別にした方がいいよ」と助言したというエピソードもある。

そんな欧州の審判員と日本の審判員の違いは、どこなのか? 岡田氏はプログラム参加後の2013年に『強さ』だと教えてくれた。

「スイスリーグ4部の開幕戦は、かなり激しくて、一触即発になりそうな緊張の高い試合です。早い段階で、足裏でガーンと飛び込んできたのがあって、それに対して別の所で両足でチャレンジした報復のファウルがありました。これは当然、両方レッドカードを出さなければいけないシーンです。ゆえに、ブワーって両選手たちが集まってきます。日本の試合だと、ここまでの対立は一年に一回起こるかどうかというシーン。木村君は、このシーンを、イエローとイエローで済ませたのですが、実際はレッドにしなければいけなかったと思います。日本で起きないようなことが起こると対応が遅れてしまうなと感じました。その点、UEFAのレフェリーはこういったものに厳しくカードを出す。スタッフに聞くと、フランスでは毎週末こういうことがあるからだそうです。

基本的には、日本でやっていることとほとんど同じなので問題なくレフェリングできます。ただ、日本と欧州では選手が違う。その選手への『強さ』、厳しさという点に少し違いがあるかもしれません。基礎の教育以外の部分が違いでしょうか。

フランスリーグで面白かったのは、試合後に隣のクラブハウスで、審判も一緒にお茶を飲んで帰ります。そこにはホームの選手たちだけではなく、相手チームの選手たちもいる。ついさっきまで、あんなにガンガンやっていたのに、終わったらワイワイやっている。日本とは文化が違うんですね。」

また、岡田氏は、「UEFAでは『シミュレーション』は恥ずかしいという風潮が出てきていて、選手もやらなくなりつつある。だから、審判側も『シミュレーション』について講義は行ないません」とも教えてくれた。2012年の段階で、である。その反面、Jリーグでは、減少傾向にあるものの、今季も『シミュレーション』が見られる。UEFAが“試合を難しくしないレフェリング”と一つ先に行っているのは、そのような背景もあるようだ。

そして、こういったUEFAでの経験は、Jリーグにも取り入れられている。Jリーグの審判員たちは、ガラパゴス化した基準でレフェリングしている訳ではない。もちろん、『サッカーダイジェスト』誌や『フットボール批評』誌にも寄稿したが、審判員側が改善しなければいけない点も多々ある。しかし、徐々に成長しているのは間違いないといえる。(了)



◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
『週刊審判批評(www.fbrj.jp)』を運営しています。有料マガジンへの登録は審判取材の支えになります!著作に『レフェリング』(JVD)。著書に家本政明氏にもご協力頂いた『ロダンのポーズで肩と首の痛みが治る!』(ぴあ)とベストセラー『足指を曲げるだけで腰痛は治る!』(ぴあ)。現在、ガイドワークス社からの三冊目を執筆中。ツイッター:@FBRJ_JP。