78分、88分に連続でゴールを決めた北朝鮮が歓喜に沸いていた。「決定的なチャンスはたくさんあったが仕事をしきれなかった」と苦虫を噛み潰したような表情で振り返ったヴァイッド・ハリルホジッチ監督ら、日本代表の面々は疲れ切った様子だった。

 序盤の3分、右サイドを駆け上がった遠藤航のクロスに武藤雄樹が飛び込むという、ともに代表初選出の選手が活躍したことで幸先の良いスタートを切ったように見えたが、その後、いくつもあった決定機を逃すと、アバウトでも前線にロングボールを蹴り込む北朝鮮の攻撃に押し込まれるようになる。後半途中から出場したパク・ヒョンイルの高さを封じることができず、1−2の逆転負けを喫した。

 高温高湿のなかでの試合を分けたのは、交代選手のパフォーマンスだったと言えるだろう。序盤の内容こそ圧倒的に日本が質の高さを見せたが、この暑さではその内容を90分間も持続できるはずもない。中国の「4大かまど」と称されてきた武漢での試合では、交代が勝負を分けることは事前にわかっていたはずだ。しかし、ハリルホジッチ監督の交代策はほとんど功を奏さなかった。交代した選手が1ゴール1アシストの活躍を見せた北朝鮮とは対照的だった。

 暑さの影響もあり、前半途中から日本代表はコンパクトな布陣を敷くことができなくなっていた。ロングボールを蹴り込まれるため、やむなく最終ラインはズルズルと下がってしまっていた。相手がサイドから蹴ってくるボールに対し、プレッシャーをかけられればそうした場面を減らすこともできただろう。しかし、[4-2-3-1]のサイドハーフの位置にいるのは宇佐美貴史と永井謙佑。両選手とも守備を得意とするタイプではなく、攻撃面で持ち味を発揮する選手だった。彼らは試合のなかで得点チャンスを得ていただけに、そこで決めきれていれば試合の展開は違ったものになっていただろうが、ゴールは生まれなかった。

 そこでハリルホジッチ監督は、56分に宇佐美に代えて柴崎岳を投入し、運動量のある武藤雄樹を左サイドに押し出したが形勢は変わらない。その後も、72分に1トップを川又堅碁から興梠慎三に交代。さらに78分に同点に追い付かれたあとも、84分に永井から浅野拓磨に代えて追加点を狙ったが、その狙い通りにはいかなかった。

 北朝鮮は同点、逆転を狙うためかなり前がかりになっていた。それに対して攻撃的なカードを切り、フレッシュな選手を前線に入れて攻撃の圧力をかけ続けることは、相手に弱腰を見せないための常套手段とも言える。追加点を奪っていれば勝負はついていたことだろう。しかし、トップ下に入った柴崎も、トップに入った興梠もほとんどボールを触ることができず、展開を変えることはできなかった。

 なぜボールに触ることができなかったのか。その理由は、彼らにパスが入らなかったからだ。前半の途中から、北朝鮮からボールを奪ってもパスが乱れることが続いていた。パスが入らなければ、いくらパスを受ける役目を体力の余っている新たな選手に入れ替えても効果は発揮できない。川又堅碁がボールを収められなかった場面も多かったが、選手が代わってもその状況に変化がなかったことがパスの受け手ではなく、パスの出し手に問題があったことを示す。

 確かに、直接的な失点の原因は、CBの高さ不足、競り合いの弱さだった。代表初出場だったパク・ヒョンイルに、森重真人も槙野智章も競り負けてしまっては勝負にならない。単純なロングボール一発でやられてしまうのは、日本代表の各年代で見られてきた失点シーンでもある。アジアの舞台でも弱点を露呈してしまったことは、今大会の今後の試合にも大きな影響を与えるだろう。ただ、それは決定力不足と共に日本代表に定められた運命でもある。そこから逃れることもできない変わりに、その課題と向き合ってきた蓄積もある。

 しかし、指揮官にはその蓄積はない。W杯予選と同様にアジアの洗礼を浴びた指揮官には一抹の不安を感じる。


【取材・文】田中 滋