浦和レッズの指揮官であるミハイロ・ペトロビッチ監督は上機嫌だった。
2015J1第5節となった川崎フロンターレ戦は、ペトロビッチ監督にとって鬼門だった。「私は等々力競技場と相性が良くない」と自認しているように、サンフレッチェ広島時代を含め、等々力での勝利は皆無に等しい。

そんな対戦成績もあってか、自らのチームが“守備的”と評されることを極度に嫌うペトロビッチ監督が、「相手にボールを持たせて、前線は一度、センターハーフまで戻り、リトリートしよう」と指示を出し、慎重な試合運びを選択した。結果は1-1の引き分けではあるが、89分に同点に追いついた試合展開は、勝利の美酒に酔いしれたい気分にさせたのだろう。

試合後は笑顔でサポーターに手を振り、そのテンションのまま、記者会見場でも話すことを止めなかった。そして、自ら、日本サッカー界の問題に切り込んだ。

「日本のサッカーの中で気になるのが、監督、あるいはアシスタントコーチ。あるいはクラブの人事で、『大学の同期』『コーチングスクールが一緒』などで採用される風潮にあると思います。
 私自身も監督を長くやっていますが、母国の知人から『アシスタントにつけてくれ』という連絡は非常に多い。ただ、サッカーはフレンドリーシップでは仕事ができない職業です。もちろん、違う形でのサポートは出来るが、同じチームではない。サッカーというのはスペシャルなジョブで、だからこそ、人間関係で『誰と誰が仲がいい』『大学の先輩後輩』で仕事をしてしまうと、良い結果にはならない。日本の問題は、そういうところがサッカー界にあると思います。
 どこかの監督になれば、自分の周りに自分の居心地のいい人を付けるというのは非常に多いと思いますが、それだけでは組織としてうまくいかない。」

それはまさに、日本サッカー協会やJリーグ事務局の問題点とされてきた部分でもある。彼らは、ペトロビッチ監督の言葉を、どのように受け止めるのだろうか。


川崎フロンターレ 1-1 浦和レッズ
35分:森谷賢太郎
89分:ズラタン
〔観客〕24,992人


【取材・文 石井紘人】



◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
著書『足指をまげるだけで腰痛は治る!』(ぴあ)が絶賛発売中。自サイトFootball Referee Journalにて『審判批評』『インタビュー』『Jリーグ紀行』『夏嶋隆コラム』を更新。審判員は丸山義行氏から若手まで取材。ツイッター:@FBRJ_JP。