昨年、全国高校サッカー選手権でジャイアントキリングが起きた。
準決勝のカード、星稜高校×京都橘戦は、多くの関係者が京都橘の勝利を予想していた。名古屋グランパス入りが決まっていた小屋松知哉が、この大会で大暴れしていたからだ。

ところが、決勝に進んだのは星稜高校だった。星稜高校の河崎護監督は、小屋松率いる京都橘を無失点に抑えた秘訣を「特別コーチとして大阪体育大学(大体大)の北村公紀コーチに二日前に守備を教わった。その二日漬けのディフェンスが活きた。選手7割、北村コーチ3割ですね」と明かした。

その星稜高校だが、昨年の決勝では富山第一に敗れ、涙を呑むことになったが、今年の全国高校サッカー選手権では見事優勝を果たした。

2012年大会ではベスト4、2013年では準優勝。そして、今年は優勝と結果を出している星稜高校。近年の躍進の理由は何なのか? 北村コーチに話を訊いた。(インタビュアー:石井紘人)

―北村さんと星稜高校との付き合いはいつから始まったのでしょうか?

「30年前ですかね。河崎先生は、私の6歳上で、大体大の入れ替わりの先輩なんです。河崎先生が、大体大を卒業して、星稜高校の指導者になって、チームを連れて大体大に初めて遠征に来た時が最初の出会いです。その時、私は学生で、遠征のお手伝いをしまして。その後、私は大体大を卒業し、昭和のラストから、平成9年の一月まで、外資系の製薬会社で働いていました。その間も、大体大で指導の手伝いをしながら、星稜高校がインターハイとか選手権に出る時は、手伝いにいっていました。河崎先生について回って指導の勉強をさせて頂いていました。」

―そうやって関係性を深め、昨年の小屋松対策を指導するなど、星稜高校にも大体大のN-Sトレーニング(夏嶋隆氏と大体大の坂本康博総監督で考案した人体に基づいたトレーニング)を落とし込んでいったんですね。

「徐々にですけど、今、大体大で指導している色々なノウハウを、星稜高校の指導にも落とし込んでいます。」

―そのノウハウですが、いつくらいから星稜高校に落とし込んでいったのでしょうか?

「2012年大会くらいからは、完全に入っていますね。」

―その2012年大会くらいから、星稜高校がコンスタントに結果を出すようになってきました。それを北村さんご自身が評価するのは手前味噌かもしれないですけど、どのように感じていますか?

「2012年大会で、鵬翔に準決勝で負け(2-2(PK3-4))はしましたが、ベスト8を超えて、星稜高校の基本的なスタイルというのが固まったんです。どんなメンバーになっても、基本は変わらない、『これがいいんじゃない』という部分ですね。それプラス、N-Sトレーニングにあるチャンスになる場所、得点が生まれるエリア。それとは逆で失点につながるエリア。また、競り合いとか動作の部分を入れて戦うというスタイルが徐々に出来てきたように思います。」

―今大会、星稜は優勝しましたけど、前評判は決して高くなかった。失礼な表現をすれば、サッカーのタレント性だけでいえば、高くはないですよね?

「はい。一人一人で見ればそうかもしれないです。」

―でも優勝できた。北村さんから見た今大会の勝因は?

「河崎先生が、三年前くらいに、密かに得ていたものが成長しているのだと思います。今年一年、それをベースに、トレーニングされていましたから。
 今年のメンバーには、去年経験しているメンバーが多くいて、私の指導も、凄くよく聞いてくれるし。今年は12月26日に御殿場で星稜高校に合流して、3ゲームくらいトレーニングマッチを見て、戦績、状態もあまり良くない。でもベースは入っているので、ポイントの確認をすれば、すぐに修正できる範囲だなと。鹿児島城西戦を皮切りに、対戦相手に良い意味で恵まれて、星稜の基本的なスタイルを、試合ごとに変えないで、一試合ずつ、少しずつプラスして、決勝にたどり着けたのが大きかったと思います。」

―では、前橋育英(前育)戦についてはどうでしょうか?

「一つは河崎先生が、準々決勝で日大藤沢に勝った後に、『決勝で(前育監督の山田)耕介さんのチームとやりたいな』とおっしゃられていて。そして、準決勝で勝利し、星稜も前育も決勝進出が決まったら、河崎先生に『前育に勝ちたいな』という希望が出て、それは自分が直接聞いたんで、それを選手たちに伝えました。今年一年、春からキャプテンが、『日本一』っていうのを言葉にして、色んなシーンで言ってきたから、『もうここまで来たら、実現しようよ』っていう話がありました。
 戦術に関しては、前育が流通経済大学柏高校(流経)戦で、そうとうロスしている部分も見られたし、決勝前日のトレーニングが軽めの調整だったっていう情報がありました。もし、前育が、コンディションが良ければ、ある程度、トレーニングをしている。つまり、流経戦で、ダメージを負っているということでもある。まず、こちらにアドバンテージが既にあると思いました。
 前育は星稜のサイド攻撃の対策をトレーニングで行っていました。でも、サイドをケアされれば、逆にサイドに食いつかせて、サイドチェンジをしながら、ディフェンスの間隔が開いたところに縦パスを入れて、ディフェンスの背後に飛び出すというのも可能になる。そういう意味で、攻撃の所はメドが立つし、点はとるだろうなと。
 あとは、ディフェンスの所で、前育の10番、14番、そして2トップを個人と組織でケアできれば。ディフェンスが粘り強くやってくれたので、それが大きいですね。」

―最後に河崎先生についてなんですが、私も一回だけ、ぶら下がりで取材したことがあって、高校サッカーに増えているプロフェッショナルな戦術監督というよりは、指導者肌で、選手の色々なところを見ることができる人なのかなと。北村さんから見た河崎監督は、どういう監督なのでしょうか?

「石井さんが今言ったところもそうで、教育者ですね。もう一つは、プロデューサーというか、コーディネーターですね。色々な人の力を借りられるんですよね。自分で長い目でみて、フェスティバルを開催したり。中日本フェスティバルとかもそうですし、自分の高校の強化だけではなくて、高校サッカー全般とか、石川県とか、北陸とか、大きな視点で、強化を地道に、作られてきたっていう素晴らしい指導者だと思います。」(了)


◇著者プロフィール:石井紘人 Hayato Ishii
著書『足指をまげるだけで腰痛は治る!』(ぴあ)が絶賛発売中。自サイトFootball Referee Journalにて『審判批評』『インタビュー』『Jリーグ紀行』『夏嶋隆コラム』を更新。審判員は丸山義行氏から若手まで取材。ツイッター:@FBRJ_JP。