J1リーグも残すは3試合となった11月22日、大宮アルディージャのホームNACK5スタジアムには1万1836人という多くのサポーターが詰め掛けた。大宮はJ1残留に向けて、一方の柏レイソルはACL出場権を手にするため、という双方にとって大事な一番が行われた。試合開始前後の気温は13度と、この時期にしては観戦しやすく、選手たちにとってもプレーしやすい気候になった。

「ハートをフィールドに置いてくる」と試合前に話したのは大宮のストライカーであるムルジャ。残留に向けて気持ちの部分では決して柏に負けてはいけないと意気込む。一方の柏は4連勝中、日本代表戦があったことによる中断期間が良い流れにどのように影響するかは注目だ。

　試合は序盤から大宮が思い切りよく前へ圧力をかける。10分、11分と立て続けのチャンス、残留へ必ず勝ち点を積み上げないといけない大宮だがここで先制点とはいかない。大きなチャンスを逃すとピンチが来るのがサッカー。19分の柏。大谷、橋本とボールが左サイドで経由すると、2シャドウの一角太田が上手く相手DFラインの裏を突く。そこに橋本がスルーパス。太田はGKとの1対1の場面で右足のアウトサイドでGKの意表をつくシュート。それが決まり5連勝を狙う柏が先制する。

　どうにか追いつきたい大宮は強力2トップ、ムルジャ、ズラタンを中心に柏ゴールを脅かすも決定機を作ることができない。しかし、前半終了直前の45分、大宮カルリーニョスが右サイドを走る家長に狭いところを上手く通したパス。家長はそこから少しドリブルしニアサイドにクロスボール。そこに飛び込んだのは逆サイドがスタートポジションだった橋本。橋本は相手DFよりも先にボールに頭で触り、ボールを上手くゴールに流し込み同点。残留に向けて勝ち点を積み上げたい大宮が追いついて、前半が終了する。

　ハーフタイムで早く動いたのは柏、ボランチの1人である若手の茨田に代えて、ベテラン栗沢を投入する。するとこの采配がこの一戦を大きく左右するものになった。試合後、ボランチを組んだ大谷は「栗澤が入ってセカンドボールを拾ったり、距離感が良くなりました。あとは奪ったボールをしっかり味方に付けられるようになったのは大きかった」とコメント。その柏は49分、前線の3人のコンビネーションにより得点。太田がバイタルエリアでボールを受けて、溜めを作りながらドリブルしレアンドロにパス、レアンドロは左サイドからグラウンダーのクロス。最後はドゥドゥがそのボールを押し込み、これが決勝点になった。

　その後、攻撃に出たい大宮だが、柏の大谷、栗沢という経験のある2人のボランチが大きく立ちふさがる。大宮は決定機らしい決定機も作ることができずにタイムアップ。柏はACLに向けて連勝を5に伸ばし、大宮は残留が遠のく痛い敗戦になった。

　試合後、柏のネルシーニョ監督は「前半は波のないゲーム運びができていて、0-1のままいければ良かったが、最後のほうに失点してしまい、そこの修正をして後半に臨んだ。栗澤が内容を変えてくれた。大谷とダブルボランチが攻守にわたって効いた。大事な勝利を引き寄せる仕事をしてくれたと思う」と自身の采配がうまく機能したことを話した。

　両チームにとって大事な今回の試合は、監督経験の差が大きく勝敗に表れた。前半、決して悪くない試合運びをしていた柏だが、ネルシーニョ監督が話すように、「高山に入ったときに茨田には横や後ろでサポートするように試合前から話していたが、茨田が前に入りすぎていた。結局彼にボールが入らず、裏のスペースも上手く作り出せず、逆にボールを取られたときに茨田の空けた穴を使われて後手を踏んでいた。そのため栗澤に代えた。彼はやるべきことを的確にこなしてくれた。そこからビルドアップも変わったし、カウンターも彼からパスが出ていました」と、悪い部分が試合に大きく影響する前に交代という形で修正をした。一方の大宮の渋谷監督は後半、なかなかペースを握れない中で効果的な策を投じることは出来ずに、残留に向けてどうしても欲しい勝ち点を取ることは出来なかった。

　これで残り2試合となったJ1リーグ。柏は次節ホームで残留争いをしている清水エスパルスと対戦、連勝6に伸ばせるか注目だ。大宮はアウェーの名古屋グランパス戦。J2降格へ崖っぷちに立たされた大宮、とにかく残留へ向けて勝ち点3が欲しい。勝利に向けて渋谷監督率いるチームがどのように準備期間である1週間を過ごすのか注目したい。


【取材・文／柴原貴彦】