第9回 夢見るのはクラブと共に進化するスタジアム

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 こんにちは。
 笹木勇一郎です。
 この夏、活動名を笹木ヘンドリクスから、笹木勇一郎へ改名しました。
「だから?」と思われる方も多いでしょうが、そもそも「笹木ヘンドリクス」自体が、わかりづらいという声もあったかもしれません。でも、改名と言っても、笹木勇一郎は本名なので、心機一転感には乏しさもありますが、さらに軽いフットワークで、弾き語りライブなどもバリバリやっておりますので、そちらもよろしくお願いします。

 札幌生まれの僕にとり、「秋が短い」のは当然の感覚ですが、今年の秋は本当に短いですよね。
 夏の暑さが終わったと思ったら、9月23日に、湘南ベルマーレのJ1昇格が決定しました。史上最速で。僕が平塚でコンサドーレ札幌戦を観戦したのは、シーズン序盤のことでしたが、「チームの土台が仕上がっているなぁ」という安定感をうらやましく思ったものです。そして10月11日にJ2優勝を決めたわけですが、湘南、J2初優勝というのは意外でしたね。

 今シーズンの札幌に対しては、戸倉賢や小野伸二の加入などもあり、僕自身はちょっと大きめの期待を抱いていたのですが、7月末からの4連敗を経て、27節終了時点で9勝7分11敗の13位という成績。8月23日にイヴィッツァ・バルバリッチ新監督の就任が発表されました。実質指揮をとるのは9月に入ってからという話だったし、残り2か月で急にチームが変わることもないだろうし、「来季へ向けて始まったな」という気持ちが強かったのです。
 しかし、名塚善寛監督代行が指揮をとった3試合を2勝1分で乗り切ると、バルバリッチ監督就任以降は4勝2分2敗。10月26日にはホームで、湘南を破り、J1昇格プレーオフ圏内の可能性が生まれています。昨シーズンは、最終節に勝てず、プレーオフ出場権を逃してしまいました。今季も最後まで楽しませてもらいたいと思います。

 
そのJ1昇格プレーオフはJ2の3位から6位の4チームで争われます。ただし、2015年度のJ1のクラブライセンスを所得したチームにしか出場権がありません。今季J2の上位で、躍進したギラヴァンツ北九州には残念ながらJ1のクラブライセンスは公布されませんでした。
 ライセンスは、財務状況はもちろん、屋根や照明、収容人数やトイレの数などのスタジアムの設備、練習場の確保など、さまざまな項目があるそうです。
 今回、北九州は債務超過とスタジアムの収容人数不足が原因で、J1ライセンスを得ることができませんでした。北九州同様に水戸ホーリーホックもスタジアムの収容人数が1万5000人に満たないため、J1ライセンスが公布されませんでした。
 逆に言えば、現在J2のクラブのうち、その2クラブ以外はすべて、1万5000人収容のスタジアムで試合を行っているということです。しかし、J2の今季の平均入場者数は6466人(11月1日現在、以下同)。
 単純に考えると、ほとんどのスタジアムのスタンドが半分も埋まっていないわけです。水戸、北九州をのぞく6クラブが平均5000人を下回っていました。

 ちなみにJ1の平均入場者数は16.850人。それを考えると1万5000人以上の収容のスタジアムという理屈もわかるような気がしますね。僕たちミュージシャンなら、人気に応じた“小屋”を選択できるけれど、サッカークラブの場合はそういうわけにもいかないのも理解できます。しかし、だからと言って「スタジアムが基準を満たさない」ことだけで、昇格のチャンスが奪われたとしたら、非常に残念ですよね。
 昨年のJ2時代の徳島の平均入場者数は4348人でした。そしてJ1へ昇格した今季は8500人と増加しています。これは、J1へ昇格することで地元での認知度が高まり、徳島にサッカーが定着する機会が生まれた結果なんだと思います。
 “成績”という結果を残したのであれば、昇格のチャンスを与えてみても良いのではないか? スタジアムの規模など満たせない規定は、数年間の猶予を持たせるとか、近隣クラブのスタジアムを借りるとかして。昇格することで、経済状況などが改善する可能性も生まれるんじゃないかなと。
 北九州は、2017年シーズンからの使用開始をめざした新スタジアム建設予定があるそうです。もちろん、J1規格の、しかも、サッカー専用スタジアム。楽しみにしたいですね。

 9月の話ですが、J3の試合を見に行きました。
 カードは相模原と町田。『相武決戦』と呼ばれるダービーマッチ(町田がホームの試合は“武相決戦”となるそう)。僕にとっては初めてスタジアムで観戦するダービーだったんです。
 相模原ギオンスタジアムの周りには、フードコートさながらにたくさんの露店が並び、「何を食べようか」と悩むほどの豊富なメニューで大盛況。活気がありました。
 多くの町田サポーターも詰めかけたこの日の入場者数は5630人。メインとバックスタンドがほぼ埋まっているという状態。開放されているゴール裏の芝生席では、シートを広げて観戦している家族の姿もあり、なんだか夏のフェスみたいで、のんびりした良い雰囲気でした。
 5000人超えただけで、スタンドに活気を感じるというのは、好環境だなぁと思いました。J3となったことでJFL時代よりも入場者数が増加したそうです。“Jリーグ効果”ですね。
 まだ小さなクラブ同士のダービーマッチでしたが、すごく自分たちの町やクラブを意識させられる試合だなと感じました。自分のよりどころが明確になるというか……。隣町とか同じ町に暮らしていれば、普段は“×××地区”の仲間として毎日を送っているはずです。でも、ダービーマッチになれば、隣町なら自分の町への、同じ町なら自分のクラブへの愛情をより強く示すことになるんだと思います。
 だから、いつもとは違う“熱”が埋まれるんでしょうね。

 松本山雅FCのJ1昇格が決まりました。
 誕生から、ここまでの歩みをずっと見て来たサポーターがたくさんいるはず。すごく羨ましいですよね。生まれたときから地元にJのクラブがあるのは幸せなことですが、応援する地元クラブが、J2へ、そしてJ1へとステップアップしていく過程を見守っていくということに、壮大なロマンを感じます。
 自分たちが愛したスタジアムで、古豪や強豪と呼ばれるチームを迎え撃つ。そしてジャイアントキリングが起きる。そんな夢を抱きながら、クラブとの関係を築いていくのも、J3の楽しみ方だなと思います。

 僕にとっても聖地は、やっぱり「厚別競技場」です。だから、厚別に照明設備が常設され、屋根ができたり、ゴール裏が2階席になったり……と、スタジアムがグレードアップすることを僕はずっと夢見ています。札幌ドームも悪くないけど、やっぱり厚別は特別。ちなみに厚別競技場はJリーグのクラブライセンスでの規定には満たしていませんが、聖地は厚別だから。

 結果を残し、人気を高め、収入を増やし、そして、スタジアムもグレードアップさせていく……。そういう循環、スタジアムもクラブの成長と共に、進化していく形が、最も美しいような気がします。もちろん、日本の場合は、クラブが自前のスタジアムを持っていないケースが多いので、欧州みたいにはいかないわけですが……。
 だからこそ、“箱”(スタジアム)の問題だけで、昇格ができないことが残念なのです。

 来シーズンの楽しみのひとつに、リニューアルした等々力競技場がお披露目になることがあります。このスタジアムは、Jリーグとともにスタンドを増築しながら、進化を続けてきたスタジアムだと思うので。


構成:寺野典子


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●笹木勇一郎/1988年1月8日札幌市生まれ。ヴォーカル&ギター。2014年6月笹木ヘンドリクスとして、シングル「星のかけら」にてデビュー。今秋以降は笹木ヘンドリクスから、笹木勇一郎に改名し、弾き語りライブなどにも参加。詳細なスケジュールなどは笹木勇一郎OFFICIAL SITEへ。