8月に新しく出来たシンガポールナショナルスタジアムには5万1577人の観客が訪れた。試合前から観客のボルテージは上がり、特に選手紹介の場面でブラジル代表ネイマールがコールされると、ブラジルサポーターのみならず日本サポーターからも大きな声援が飛んだ。

 アギーレ監督の初戦になったウルグアイに続き、南米の強豪ブラジルが相手だ。試合前に6人のメンバー変更を明かしていたアギーレ監督。スタメンはGK川島、DFは右から酒井、塩谷、森重、太田、アンカーには田口、1つ前が右に柴崎、左に森岡、3トップは右から小林、岡崎、田中となった。

 試合が始まり積極的にいったのは日本代表だった。日本代表は前線から積極的にプレスをかけ、強豪ブラジルに対して守りに入ることなく、気持ちの入った立ち上がりにする。しかし、そこはブラジル代表、日本のプレスにも落ち着きながら対応、またネイマールが個人技でボールを持ちリズムを作り出す。

 最初のビックチャンスはブラジル。ゴール前でのFKをネイマールが蹴る。蹴ったボールはGKから遠いサイドに飛ぶ。ボールはポストに弾かれ、わずかな差でゴールにはならない。会場が湧いたのはその直後の18分。ジエゴ・タルデッリのパスを受けたネイマールが日本DFを振り切る。そのままGKの川島も交わしシュート。これがゴールに突き刺さり、エースの一振りでまずはブラジルが先制する。

 29分、日本はこの日スタメンの小林にチャンス。太田のクロスがDFに当たったセカンドボールをボレーシュートするがボールは枠を捉えきれない。その後も日本は積極的に攻撃に出るが、前線の岡崎が孤立気味なこととブラジルの2人のCBがFWにボールが入るや否やしっかりとプレッシャーをかけ、攻撃の起点を作らせない。そんな中でも日本代表は酒井のクロスに岡崎が頭で合わせる場面を作るなど、同点を狙いにいくがゴールは遠い。

 後半を迎えるが、ハーフタイムに両監督が動く。ブラジル代表は3人を一気に変えて後半戦へ臨み、対するアギーレ監督は森岡に代えてエース本田を投入する。本田は3トップの左に入り、そのことで田中は1つ後ろのポジションへ動く。エースが入り攻撃への圧力を増したい日本だったが、48分、日本の中盤でのパス交換でミスが出ると、そこを見逃さないのはブラジル代表。柴崎のパスミスをコウチーニョがマイボールにするとすぐに前線のネイマールへスルーパス。守備への準備が出来る前の日本のDF陣は、ネイマールの動き出しについていけず、またしてもGKと1対1を作られてゴールを許す。

 2点のビハインドを追う日本代表は、小林に代えて注目の若手武藤をピッチに送り出す。武藤は3トップの左にポジションに入り、本田は右にポジションを移す。すると55分に日本代表のチャンス。田中が浮き球で岡崎にパスを通し、岡崎がシュートを打つがポストに当たりここも得点にならない。

 その後ブラジルはロビーニョやカカといったベテランを投入。日本もその間に田中を下げ、細貝がピッチに入る。細貝はアンカーの位置に入り。田口は1つ前の右へ、柴崎はそのことで左にポジションを移す。守備に優れた細貝を入れてこれ以上差を広げられたくない日本だったが、ブラジルはそうはさせない。77分、右サイドからのネイマールのクロスにニアサイドに走り込んだカカがヘッドで合わせる。ここはGK川島が間一髪セーブする。そのこぼれたボールをクリアするが中途半端になる。これを拾ったマリオ・フェルナンデスが右足でシュート。川島が左に飛びボールを弾くが、そのこぼれ球を狙っていたネイマールは落ち着いて決め、ハットトリック。会場からは大きな声援がネイマールに送られる。

 ネイマールのゴールショーはまだ終わらない。81分、ロビーニョからのパスを受けたカカが左足でふわりとしたクロスを入れる。そこに走り込んだのはネイマール。ネイマールはこれをヘッドでたたき込みこの日4点目を挙げる。日本は岡崎に代えて柿谷を、柴崎に代えて鈴木を投入、森重をアンカーにし、細貝が1つ前の右に移り、なんとか1点を取りに行くが、力及ばずここでタイムアップ。力の差を見せつけられた、0−4というスコアに終わった。

 試合後のアギーレ監督は「前半は良い戦いをしていた。同点に追いついてもおかしくなかったと思う。だが2点目を決められて崩れた」と2点目の失点が大きくチームに影響したことを話し、続けて今回の試合もアジア杯へ向けての選手選考の場であることを改めて強調していた。また日本のリスタートの場面からチャンスを作られたとコメント。その言葉通り、日本代表は自分たちのリスタート後の守備への切り替えのところは今後しっかりと修正しなくてはいけない課題だろう。

 今回のブラジルとの対戦で、追う展開でも戦える選手を見ることが出来たと選手選考の場としてはいいものだったとも話したアギーレ監督。さらにアジア杯の23人に内定している選手はすでにいることも付け加えていた。

 アジア杯へ向けて残り2試合になったアギーレ監督の選手選考の場。さらに新しい選手が呼ばれるのか。今回の戦い方を見るかぎり、複数のポジションをこなせる選手が監督の求める選手であることはまず間違いなさそうだ。また、これまでの戦いでミスをした選手たちをどうするのか、ミスをどう判断するのかで、監督の技量や考え方が分かるが、修正の効くミスだと見なされるのか、はたまた能力の欠如によるものなのか、さらにはミスを自分の糧とする能力がある選手なのかどうか。11月の代表戦でリターンマッチはあるのか、それとも今回のように勝負を捨てて、選手のトライアルを優先するのか、負けず嫌いの監督がどんな選手を呼び、どう起用するのか、まずは選手発表が楽しみだ。

(取材・文 柴原貴彦)