09_tatsuya_1FW第17回「先輩たちの姿にプロというものを教えてもらった」



----------------------------------------------------------------------
 
シーズン後半戦は3連敗でスタートし、その後も連勝ができず、悔しい毎日が続いています。
良い内容のゲームをやったからといって、勝利が約束されるわけではない。
不思議なもので勝っているときは内容が悪くても結果がついてくる。
それが勝負事なんだと思います。

運、不運というか、流れみたいなものがあるのかもしれません。でも、そういう言葉では説明のつかないものを引き寄せるのもまた、自分たち次第だと思っています。
そのために重要なのも、やはり日々の練習なんですよね。チームメイトを信じ、自分を信じ、迷いなく力を発揮できる準備が必要だと考えています。
試合だけがサッカーではなく、そこへ向かう時間すべてがサッカーに繋がっている。
そして、良い結果を導く使命が選手にはある。
自分のためだけにプレーしているわけじゃない。
プロになり、そういう気持ちを強く持つようになりました。

高校を卒業し、浦和レッズに加入したとき、チームには福田正博さん、井原正巳さんという大ベテランの先輩が在籍していました。子どものころから僕は、日本代表などで活躍されている姿を見てきたので、お二人と初めて会ったときは、本当に緊張しましたね。

同じポジションの福田さんからは、ピッチ上で、いろいろと助言をしていただきました。
「もっと周りを見ろ」「左足も使え」とか、本当に細かいことまで指導してもらいました。
当時の僕は、ドリブルばかりしている選手。それしかできないからしょうがないんです。だから、唯一得意なドリブルだけで勝負することで小さな自信を積み重ねるしかなかった。
もちろん、ドリブルだけで戦い抜けるほど、プロのステージは甘くない。福田さんのアドバイスに助けられたことは何度もありました。福田さんにとっては僕は手のかかる後輩だったのかもしれませんが、それでも根気強く、叱咤激励してくれました。

「これがアジアの壁、一流選手の身体なんだ!」
井原さんの鍛え上げられた身体を見たときのインパクトは今でも覚えています。
しかも、誰よりも早く練習の準備に取りかかり、誰よりも長くクラブハウスにいるのが井原さんでした。若い僕ら以上に練習をされていたんです。身体のケアや筋肉トレーニングなど、チーム練習が終わったあとに費やす時間がプロにとって大切だということを新人だった僕に教えてくれたのが井原さんでした。

僕は今、ベテランと言われる立場になりました。でも、お世話になったベテラン選手の方々に近づいているとは思えません。僕はまだまだやらなくちゃいけないことがたくさんあるし、自分と先輩たちとを比べることは、大それたことです。
いわゆるベテランが持つ落ち着いた雰囲気や冷静さというのは、僕らしくないようにも思うんですよね。だから、僕なんて、まだまだなんです。

確かにチームメイトとプレーについて話す機会は若いころよりは増えました。でも、それはベテランだからというよりも、チームメイトのことを理解したいし、自分のことをわかってもらいたいから。パスのタイミングだとか、フィールドの上で起きる細かい話をすることで、プレーが改善できることがたくさんあるはずだと思っているからです。
最近はベンチスタートの試合も増えています。途中出場というのは、先発でプレーするのとはまた違ったむずかしさがあります。でも「どうにかして勝ち点3を手にしたい」という想いでピッチに立つのは、どんな状況でも同じです。しかし、その気持ちが結果に結びつかない現状にもどかしさというか、自分の力不足を痛感しています。

練習のときから、必死になってやってはいるけれど、結果が出ないというのは「まだ必死さが足りないんだ」と、自分を奮い立たせています。
必死になりすぎて、空回りするのは良くないことですが、それでも、空回りするくらいのやる気というか、熱い気持ちでプレーしたい。
冷静にふるまうのは自分らしくないと思うから。
目の前にあるボールに食らいつくようなそういう姿勢でサッカーと向き合いたいんです。
それは、簡単でシンプルなことですけど、そういうところを突き詰めることが、僕らしくサッカーを楽しめることに繋がると考えています。

プロとして生き抜くために必要な厳しさを教えてくれたたくさんの先輩たちの存在は僕にとっての財産です。当時の僕は自分のことで精一杯で周りを観察するとか、そこから学ぶという部分での余裕が無かったと思います。それでも先輩からの言葉やサッカーに取り組む姿勢など、知らず知らずのうちに僕の中に残っているものがいろいろとある。それは本当にありがたいこと。感謝しています。

今季も残りわずかです。
1点でも多くの勝ち点を手にするため、日々、どんなときでも必死にサッカーを楽しもうと思います。


【構成/寺野典子】