09_tatsuya_1FW第16回「夏のチャレンジ」



----------------------------------------------------------------------
 
こんにちは。
今年の夏は、みなさんどんな夏だったのでしょうか?
僕は結構忙しい毎日でした。
ワールドカップ期間中のリーグ中断期間に少し休暇があったくらいで、あとは毎日トレーニングに汗を流す夏でした。
そんななか、ひとつ新しい挑戦をしました。
挑戦というほど大げさな話ではないのかもしれませんが……。
日本サッカー協会公認C級コーチ養成講習会を受講したのです。

サッカーの指導者になるためには、“ライセンス”が必要なんです。
ライセンスは、10歳以下の子どもたちを指導するキッズリーダーから、D級、C級、B級、A級、Jリーグで指揮ができるS級と、選手の年齢やチームのカテゴリー別に分かれています。
引退後に指導者の仕事に就きたいと考える選手のなかには、現役中から講習会を受講する人もいます。もちろん現役選手が受講できるライセンスには制限がありますが、C級ライセンスを持っている選手たちから、「ライセンス講習会を受けてみると、いろんな発見があって面白いよ」という話は、以前から耳にしていました。だだ、僕自身は興味がありつつもなかなか機会がなかったんです。
しかし、今回はチームメイトと一緒に練習も合間を縫って受講できるということだったので、チャレンジしました。

C級は12歳以下の子どもたちの指導者育成のためのカリキュラム。
机に座り受ける講義の内容も、非常に基本的なことが中心です。そして、実技でもボールを止める、パスを出す、シュートを打つ……と、基礎的なボールを扱う技術について、学びます。トラップにしても、ドリブルにしても小学生に教えること、小学生時代に教わったことを今、改めてやっているわけですが、それがとても楽しいですね。指導者講習会というよりも、僕にとってはトレーニングの一環のような感覚なんです。長年プレーしているなかで、忘れているわけじゃないけれど、自分の癖が染みついたプレーもあると思うんです。でも、「基本はこうなんだな」といろいろなことを再確認できるのは新鮮だし、現役の今、それができて良かったなと思うんです。
先輩たちの言葉通りでしたね。

講義のなかで、年間何名の人がC級ライセンスを取得し、その後、どんなステップを踏み、S級ライセンスを手にしたかという話も聞かせていただきました。
引退後も現場でサッカーに関わる仕事ができれば、いいなぁとは考えていたけれど、そういう現実的な話を聞くと、「果たして自分にできるのかなぁ」という風にも感じました。それは気おくれしたのではなく、指導者になりたいという目標は変わらないけれど、そんな簡単なことではないということです。

指導者ライセンスの講義を受講したからといって、指導者としての思考や目線が生まれるということもないんです。「こんな監督になりたい」と、考えることもないですから。現役選手として戦っていくことしか、今は見えていません。

アルビレックスには、現在多くのFW選手が在籍し、レギュラー争いは本当に激しくなりました。ベンチに入ることも簡単じゃない状況です。その競争に勝つためには、とにかく練習中から手を抜かず、監督の信頼の応えられるトレーニングをし、結果を残すしかない。
信頼に値するプレーができなければ、次の試合には出られない。
その危機感は常にあります。そしてそれが、柳下監督の厳しさであり、スタイルだなと思う。
 
すごい監督だと思いますね。
とにかくブレがない。監督の話はわかりやすくて、納得できることが多い。本当に1本筋が通っているようなサッカーを貫く指揮官です。
実は僕は、日本代表やオリンピック代表を除く、チームで日本人監督のもとでプレーしたことがなかったんです。レッズ時代はすべて外国人監督だったから。初めての日本人監督となった柳下監督の理論やスタンスにはいい意味での驚きがありました。日本人だから分かり合えるというか、通じ合える部分もあるのかもしれません。

僕がプロ1年目で指導してくれたのがハンス・オフトさん。
厳格と言われるオフトさんですが、若い僕にはそれほど細かく求めることもなくて、「ドリブルやっていろ」みたいな感じで自由にやらせてもらっていた。でも、今、思ったんですけど、柳下監督とオフトさんには共通点があるような気がします。ブレのないところや厳しいところとか……。ジュビロ磐田でオフトさんが指揮を執っていた時代、柳下監督はコーチとして共に仕事をしていたんですよね。それが理由かはわからないけれど、ちょっと似ているなと。

必死に厳しく楽しんでサッカーをやりたい。

そう思っている僕にとって、過酷なポジション争いという現実、厳しい監督の存在がエネルギーになっているなと感じます。
そんな暑い夏に受講した指導者講習会。
さらにプレーヤーとして成長するために、基本を再確認できた有意義な時間でした。


【構成/寺野典子】