久保竜彦、服部年宏、家本政明。
彼らには共通することがある。静岡県御殿場にいる動作解析の専門家、夏嶋隆の元で合宿を行ったということだ。
服部は、Sportiva誌のインタビューで、夏嶋との出会いについて、下記のように語っている。

「足首のくるぶしがすごく痛くなって。いろんな人に診察してもらいました。(病院で)レントゲンやMRIを撮ったり、気功に通ったり、スピリチュアルまで(笑)。それでも原因がわからず……、知り合いに『御殿場にいい先生がいるよ』と言われ、思い切って行ってみたんです。
そしたら、『(足の)指で立って』と言われました。足の五本指をグーのようにして立つんですけど、これが最初は腫れて痛かった。
『これでダメなら無理』と思っていたほどです。でも、三ヶ月続けていたら、痛みが消えてピッチに立てるようになったんです。どうやら足のアーチが崩れたり、指が正しく使えない状態になっていたようで。
子供は簡単に指で立てるらしいですね。自分の場合、ずっとサッカーをしてきて矯正が必要で、正常な形に近づいたら痛みがなくなったようです。あのタイミングであの治療をしていなかったら、サッカーをやめていたかもしれません。」

簡単に言えば、これが夏嶋の理論である。
足を本来の形に戻す。そのために、『足指トレーニング』を課す。その方法が掲載された書籍『足指をまげるだけで腰痛は治る!』が発売された。
本書内で、サッカー界のトレーニングと夏嶋のトレーニングの違いを久保が分析している。

「俺は、いがんでいる歩き方とか、(Jクラブの)トレーナーにも言われていた。それで、トレーニングで『こっちに傾いている』とかを直すんだけど。ただ、『なんで傾いている?』とかにはなんないんですよ。調整なんですよね。元を治すんじゃなくて、『もうちょっと高く上げて』と言われる。けど、意識しては出来るけど、『あー疲れたー』って(無意識動作に)なったらね。で、『またズレているぞー』って。夏嶋先生は、元(の日常や無意識動作)を治す。指がおかしいけん、全部がちょっとずつズレて、こうなっているっていうように。」

だが、夏嶋の“当たり前の”アドバイスが受け入れられることは少ない。久保は続ける。

「選手としては試合に出られればいい。俺ん時(2005年に腰痛で試合に出られなくなり、神頼みで夏嶋の元に治療に行った)は、本当に聞く耳もたんかったね。『痛みとってくれれば、それで十分です先生』って。『足指?そんなん腰と関係ねぇやろ』って(笑)
先生にテーピングやってもらうと、スーってなるから、それで十分なんよ。見よう見まねで(所属するチームの)トレーナーが真似しても、全然、スーってならん。やっぱね、違うん。選手だったら、全然違うのが分かる。だから、それ欲しがって、みな、(夏嶋がいる)御殿場まで行く。
けど、選手は、それで勘違いしてしまう。テーピングで治っているって。自分の体がいがんでるとかではなくて、テーピングで楽になるから、自分の癖を治すじゃなくて、テーピングで治るもんだと思う。
(足指トレーニングは)かなり痛いっすもんね。それだけ痛いっていうのは、指がいがんでいるっていうのが、今は分かる。だから、(慢性的な痛みを治すためには)積み重ねしかないですね。簡単に治したいけどね。みな、最初のゆがみを治す、バキでやめてしまうんじゃないですか。
本当に毎日、少ない時間でもやり続けないと変化が分からないんですよね。
いま、筋トレ好きな人いるじゃないですか。やっぱ、ああいうことなんだろうね。やり続けていて、「あれ?ちょっと変わってきた」っていうのを感じれて、楽しくなっていくんだろうけど。」

しかし、その身体の変化を感じさせるのを凝り固まった頭が邪魔する。久保も、夏嶋の言葉に耳をかさず、結果、横浜FCに移籍してすぐに体が悲鳴を上げた。夏嶋が予測したように、腰痛の再発と膝の問題で日常生活もままならなくなる。そして、ずっと勧められてきた手術ではなく、夏嶋の元でトレーニングを行うことを選択する(詳細は本書内にて)。

「18歳までは誰の言うことも聞かずに、適当にサッカーやってきて、18から色んなね、コンディションのこととか、体のケアのこととか叩き込まれて。
自分の体が楽とか、スーって気持ちよくなるとかっていう感覚を無視して、やっていたんですよね。言われるがままに。それが注射で楽になったりとか薬で楽になる方を自分なんかも選んでいて。」

久保が言うように、構造医学の概念の欠如が、身体の変化を感じ取れなくさせる。そして、いつの間にか慢性的な怪我を抱えてしまう。とあるスポーツ界の権威である医師は「女性選手はX脚が多く、怪我をしやすい」と分析し、そのためにリハビリプログラムを強化したと語っていたが、夏嶋はそうではなくX脚を改善する。そのトレーニングの一端が『足指をまげるだけで腰痛は治る!』である。年齢を重ね、慢性的な痛みを持つ人間は何千万人といる。そうならないためにも、本書に目を通してみては如何だろうか。