09_tatsuya_1FW第15回「ヤマさんについて」



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暑中お見舞い申し上げます。
毎日暑い日が続いていますね。

今日は、先日行われたヤマさんこと山田暢久さんの引退試合についてお話しようと思います。
ヤマさんは、高校卒業後に浦和レッズへ加入し、昨シーズンいっぱいで引退するまで20年間も浦和ひとすじでプレーされた選手。サッカー選手としての技術はもちろん、非常に高い身体能力の持ち主で、現役時代は、あらゆるポジションでプレーし、どんな監督にとっても頼りになる選手として活躍してきた人です。

だから、僕が浦和レッズに新人として加入した時は、本当に雲の上の存在という感じでした。特に怖いとか、近寄りがたいという雰囲気があったわけではないんだけれど、当時のオフト監督はレギュラー組と控え組とを明確に分ける指導だったせいか、僕がルーキーのころは、ヤマさんと言葉を交わした記憶があまりないんです。

ヤマさんは本当にマイペースな人で、新人選手に特に強い興味も抱いていなかったのかもしれません。とにかく、自分のスタンスを大事にしているなと思ったし、自分のペースで、サッカーに集中している人だなという印象がありました。オンとオフがはっきりしているというか、リラックスするところはリラックスしているんですよね。
 
僕がレギュラーとして試合に出るようになって、徐々にヤマさんと話す機会も増えていきました。練習場や試合会場などで、息子の樹生くんといっしょにいる父親としてのヤマさんを目にして、「僕も早く家族を持ちたいな」と思ったのも事実です。

そして、僕が結婚してからは、家族ぐるみの付き合いが始まりました 自宅が近所だったこともあり、僕だけでなく、うちの奥さんや娘たちも山田家にはいろいろとお世話になりました。新潟へ越した今でも、埼玉へ行くときには必ず連絡をして会っているんですよ。

ヤマさんがキャプテンに就任し、浦和レッズは数々のタイトルを手にしてきました。ヤマさんはいわゆる“キャプテン”らしい“キャプテン”ではなかったと思います。でも、個性の強い選手が集まっていた当時のレッズのキャプテンにはヤマさんが適任でした。試合中には「なんで、俺にボールを出さないんだ」とか、僕も含めて自己主張をぶつけ合うチームのなかで、ヤマさんの穏やかなスタンスというか、雰囲気が、チームの空気を和らげてくれたと思います。

そんな当時の選手たちが一同に会したのが、7月5日に埼玉スタジアムで行われたヤマさんの引退試合でした。
「ヤマさんの引退試合の日は、スケジュールを空けて待っていますから。声をかけてくれないと、俺、マジでふてくされちゃうますからね」とずいぶん前から言ってこともあり、結構早いタイミングで、引退試合に誘ってもらえました。やっぱり嬉しかったですね。

引退試合の日に、アルビレックスはベガルタ仙台とのプレシーズンマッチが予定されていたのですが、僕のことを快く送り出してくれました。本当に感謝しています。


レッズ歴代選抜 Rest of the REDSの一員として、参加したわけですが、現在はいろいろな立場で活躍している仲間がロッカールームに揃うと、7、8年前の当時と同じような空気なんですよね。ハセ(長谷部誠)はいじられているし、もちろんヤマさんもいじられているし。闘莉王や僕はワイワイにぎやかにやっているし。まったく違和感がなく、立ち位置も昔のまんまで。同窓会みたいな感じですよね、きっと。

引退試合というイベントに参加するのは、僕にとって初めての経験でした。
とにかく、主役のヤマさんを中心にみんなで楽しい時間が過ごせたら一番なんだと思っていました。そうすることで、見に来てくれた方も楽しんでもらえるはずだと。そして、ヤマさんをリスペクトしている想いが伝われば、最高だなと考えていたんです。
チームメイトから、イジられたりするヤマさんですが、みんな心の底からヤマさんのことをリスペクトしています。ヤマさんのような選手は、もう2度と出てこないんじゃないかなとすら思っています。

僕自身が、浦和レッズを離れて、新潟へ行く際に、「もうヤマさんとは一緒にプレーをする機会はないんだな」という風に思っていたし、ヤマさんが現役引退を決意してから、半年くらいの時間が経っていたので、引退試合で、感傷的な気持ちになることはありませんでしたね。

でも、息子さんの樹生くんが、選手としてピッチに登場したときは、ちょっとグッときましたね。僕の寮の部屋で遊んでいたまだ2歳くらいだった樹生くんももう高校生なんですよ。立派になったなぁって、少し父親気分でした。

ヤマさんは、“高い身体能力”など、生まれ持った武器や才能がある選手。僕が見習おうと思っても、真似できるものはないように思います。ただ、自分のペースを大事にするヤマさんのスタンスは、僕にも通じるところがあるかもしれませんね。僕も自分のことで精一杯というタイプだから、アルビレックスの若手から見たら、「マイペースな先輩選手」なのかもしれません。

山田暢久という、唯一無二とも言える素晴らしい選手とチームメイトとして、共に戦えたことは、僕にとって、非常に貴重な財産です。そんなヤマさんの引退試合に出られるなんて、本当に光栄で、幸福な経験でした。

ヤマさん、どうも、ありがとうございました。

20年間お疲れ様でした。現役は引退したけれど、これからもヤマさんらしく、今の仕事をやってもらいたいし、これからも先輩というか、友だちとして、付き合っていただいたら嬉しいです。

(※構成者の都合により、掲載が遅れたことをお詫び申し上げます)


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【構成/寺野典子】