第5回 小林慶行さんと。 パート2「規律正しいブラジルは無敵か?」

hendrix26月15日に下北沢のカフェ、Seven Colorsで行われる「W杯を見たい! 聞きたい! 歌いたい! feat.笹木ヘンドリクス&Football Weekly」開催を記念して、スペシャルゲストの笹木ヘンドリクスと小林慶行さんの対談を3回に分けてお届けします。
パート2は、ワールドカップブラジル大会の注目国について。

※イベントのチケットはおかげさまで完売いたしました。


前回覇者のスペインはどうだ?

笹木 ワールドカップを前にして、あれなんですけど、今季のバルセロナについてどう感じていますか? リーガも勝てば優勝という最終節で、CL同様アトレチコ・マドリーに勝ちきれなかった。6シーズンぶりの無冠だったわけですが、過渡期を迎えたのかなぁ……という風にも感じるんですよね。
小林 一番大きいのは監督が代わったことじゃないかな。
笹木 アシスタントコーチだったビラノバが、グラウディオラのあとを引き受けたけれど、のちに健康問題で退任(2014年4月死去)し、13−14シーズンから、アルゼンチン人のマルティーノが就任しましたね。
小林 ビラノバは長くグラウディオラのもとにいた人だったから、サッカーのスタイルも継承されていたと思うし、ビラノバが病気治療で不在中もそれを維持していたけど、マルティ―ノが来てからは、もう少し早く前へいこうとするスタイルに変わった。そうなると、日々のトレーニング内容も変わってくるはず。長く積み重ねてきたバルセロナの武器を磨く時間は削られたと思うんだよね。たとえ長年やってきたサッカーであっても、トレーニングをしていないと、その質は当然下がってくるからね。
笹木 新しいスタイルでうまくいかないから、じゃあ、自分たちのよりどころ、強みだったサッカーに立ち返ろう、戻ろうと思っても、うまくいかない、と。
小林 もちろん、どんな環境や状況でも相変わらず高いレベルでプレーできる選手もいるけれど、戸惑いを感じたり、共有すべきイメージ持てないという選手も出てくると思うんだよね。いわゆる“バルセロナのサッカー”は、選手全員が高いレベルでそのスタイルを追求しないと成立しない。そういう一体感が表現できなかったことが、結果につながっているように思うよ。
笹木 そんなバルセロナの来季の新監督がルイス・エンリケに決まりました! 名選手が名監督になれるのか? また楽しみが増えましたね。
小林 ローマではうまく行かなかったけど、古巣で力を発揮してほしいよね。

笹木 前置きが長くなりましたが(笑)、ワールドカップ前回覇者のスペイン代表はどうでしょかね? デル・ボスケ監督が就任したのが2008年。その直後のEURO,2010年ワールドカップ、2012年EUROと優勝し、サッカー史に残る最強チームと言われていますね。
小林 確かに、内容的についても結果についても、申し分ないチーム。ただしそれだけ、分析されて、対策が練られているのも事実。ワールドカップを2連覇するのはとても難しいことだからね(1962年大会でのブラジルの2連覇以降、連覇した国はない)。2010年大会前のような勢いがあるかと訊かれたら、少し落ちたのかなぁという印象もなくはいないよね。

 
変貌したドイツの成果に注目したい

笹木 またアトレチコの話で恐縮なんですが、CLの決勝戦でのプレーにはある種の美学があって、感動しました。タレントが揃うレアル・マドリーを相手に確かに守備的ではあるんだけど、ボールを奪ってからの攻撃の迫力がハンパなかった!
小林 モウリーニョもそういうスタイルで結果を手にしてきたよね。ある種とても現実的な戦い方で、批判的な見方をする人もいるかもしれないけど。ワールドカップに出場する国にも堅守速攻タイプのチームは意外と多い。ウルグアイもそうだけど、厳しい予選を勝ち残るには、必要なスタイルなんだろうとは思う。でも、やっぱりガチガチに守ってというチームがワールドカップで、優勝するのは避けたいかな(笑)。
笹木 ワールドカップの結果によって、世界のサッカーのトレンドが変わると言われますもんね。僕もフィジカル対決みたいな試合よりかは、テクニックや連動などで攻略し合う楽しいサッカーが見たいですから。そういう意味で、バイエルン・ミュンヘンとドルトムントのブンデスリーガ対決になった昨季のCLの決勝戦は、いろんなものがいいバランスでミックスされた試合だったなと感じました。そういう意味でも、ドイツ代表が気になります。
小林 現代表の中心選手たちも20代半ばを過ぎて、経験を積み、成熟度が高まっているから、自然と期待してしまうよね。
笹木 今では想像も出来ないけど、かつてのドイツサッカーは、フィジカル中心でパワープレーを武器にし、強さと高さが売りだったんですよね。
小林 そう。でも、2000年のユーロや2002年のワールドカップ日韓大会を機に、「このままのスタイルでは、先はない」と強い危機感を持ち、技術力や戦術力に長けた子供たちの育成に舵を切ったというのは、有名な話。
笹木 僕も何かで読んだことがあります。2002年は準優勝しているのに、それでも危機感を持てるのは、サッカーを知っている人、サッカーを見る目を持った人が多いということなでしょうね。
小林 サッカー協会だけでなく、各クラブも含めて、ドイツが一丸となって、ひとつの方向へ向かっていったのはすごいことだと思うよね。もともとブンデスリーガの下部組織というしっかりとした育成の基盤があったことも大きいと思うけれど、自分たちのスタイルを変えていくというのは、それほど簡単なことじゃない。しかもすぐに結果を求めるのではなく、子どもたちの指導方法から改革していくというスタンスが素晴らしい。
笹木 そうやって育てた選手が、現代表の大半を占めているわけで。ブンデスリーガの躍進にもつながっているんですよね。
小林 選手というのは生ものだし、ずっと同じ力を発揮できるわけではないから。世代交代というのは、クラブだけでなく、代表でも重要なテーマ。前大会ではイングランドやイタリアなども世代交代が進んでいないことが、敗因のひとつとして挙げられたけど、残念ながらそれは、4年で解決する課題ではないからね。
笹木 若手育成といえば、ベルギーも気になりますね。あと、フランス代表は内紛がなければ……(笑)。
小林 ワールドカップ優勝キャプテンのデシャン監督のピッチ上だけなく、ピッチ外での手腕にも注目だよね。

 
最有力候補はやっぱりブラジル

笹木 優勝候補は、やはりブラジルになりますか?
小林 本命中の本命だと思うよ。
笹木 やはり自国開催だから?
小林 そこはメリットにもなり、デメリットにもなる可能性が高いよね。国民は勝って当然だと思っているわけだから。勝てなければ、すごい騒ぎになるはず。
笹木 マラカナンの悲劇(1950年の自国開催のワールドカップで、勝てば優勝が決まる一戦で敗れ、自殺者が出た)ほどの国ですからね。プレッシャーはハンパないですね。
小林 でも、昨年のコンフェデレーションズカップのように、そのプレッシャーが後押しとなるケースもあるからね。
笹木 ブラジルと言えば、世界一の個人技の国ですよね。2002年大会での優勝は、まさに個の力で、世界を圧倒していた記憶があります。
小林 でも、その大会の監督だったフェリペ率いる現代表の強さは組織力だと思うよ。
笹木 ブラジルもドイツのように方向転換したんですか?
小林 ブラジルの場合は、方向転換ではなくて、プラスアルファーさせたというイメージかな。結局2002年以降2大会でベスト8進出で終わっている。欧州のチームに勝つためには、組織的な戦い方をしなくちゃいけないと悟ったんだと思うよ。
笹木 前大会の監督だったドゥンガも規律や守備への意識を選手たちに徹底したけど、国民からは「つまらないサッカーだ」と非難されていましたよね。
小林 規律や組織というのは、ブラジルの文化には馴染まないけど、それをやらないと勝てない。フェリペは、ワールドカップで優勝しているし、ポルトガル代表でも結果を残しているから、ドゥンガとは説得力が違うはず。同時にチームにそういう哲学を植えつける術にも長けていたんだと思う。組織力や規律を身につけたからと言って、個の能力が欠けることはないだろうから。あの個の能力に、組織力や規律を身につけたんだからね。規律正しいブラジルなんて、ちょっと想像しづらいけど……。
笹木 鬼に金棒というか、そりゃ強いわってなりますよね。
小林 もちろん、組織力や規律だけでも勝てない。最終的には個の能力がモノをいうし、ネイマールのような選手がアクセントとなるから。
笹木 ブラジル大会を契機に、また世界のサッカーが、どんなふうに進化していくのかも楽しみです。


<構成/寺野典子>

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●笹木ヘンドリクス/1988年1月8日札幌市生まれ。ヴォーカル&ギター。" ヘンドリクス " メンバーたちと共に、ライブシーンで話題を集めている。ロックの王道を背骨にしながらもあらゆる“グッドテイスト”を欲張りに取り込こもうとする雑食系ギターサウンド。言葉が突き刺さる歌とメロディラインがインパクトを残してくれる。6月11日、シングル「星のかけら」でメジャーデビュ―決定! 東京、名古屋、大阪、札幌フリーライブとサイン会も行われます。ライブ情報などは、笹木ヘンドリクスOFFICIAL SITEへ。


●小林慶行/1978年1月27日埼玉県生まれ。桐蔭学園、駒沢大学を経て、1999年東京ヴェルディでプロデビュー後、大宮アルディージャ、柏レイソル、アルビレックス新潟に在籍。2011年にはJ1通算300試合出場を達成。2013年に現役を引退し、現在は指導者や解説者として活躍中。