第4回 小林慶行さんと。 パート1「ザッケローニの自信」



IMG_11406月15日に下北沢のカフェ、Seven Colorsで行われる「W杯を見たい! 聞きたい! 歌いたい! feat.笹木ヘンドリクス&Football Weekly」開催を記念して、スペシャルゲストの笹木ヘンドリクスと小林慶行さんの対談を3回に分けてお届けします。
 パート1の今回は監督について。

※イベントのチケットはおかげさまで完売いたしました。






「指導者と選手」「プロデューサーとアーティスト」との共通点

笹木 こんにちは。初めまして。今回はイベントへのゲスト出演を引き受けてくださって、ありがとうございます。
小林 楽しみにしています。ところで、笹木君は(西)大伍(鹿島アントラーズ)と同級生だったんだって?
笹木 はい。中学校が同じで。高校は別だったですけど、通学途中などに会って、中学時代よりもよく話していたかも。そっか、小林さんはアルビレックス新潟で大伍とはチームメイトだったんですね。
小林 年齢は離れているんだけど、いっしょにいる時間が長かったなぁ。だから、笹木君が同級生だったって聞いて、こういうのも縁だなぁと思って(笑)。
笹木 ほんとにそうですね。小林さんは2年前に現役を引退されたわけですが、サッカーの見方というのは、変わりましたか?
小林 今は、指導者としての道を歩み始めているんだけど、やっぱり“指導者としての目線”でサッカーを見ているなって、すごく感じますね。もちろんそういう目線も大事だけど、選手のときの感覚も忘れないようにしなくちゃといけないと考えているんだよね。
笹木 CDを制作するときにプロデューサーの力を借りることがあります。今の話をきいて、「プロデューサーとアーティスト」の関係が「指導者と選手」に似ているような気がしました。プロデューサーの仕事を一言で説明するのは難しいんですけど、簡単にいうといろいろ相談に乗ってくれて、アーティストの力を引き出してくれる……という感じの人なのですが、アーティスト活動の経験があるかないかで、いろいろ違う。やっぱり、現役のアーティストとして活動されていた人のほうが、ちょっとしたワガママも許してくれるんですよね(笑)。
小林 指導者の立場からいうと、それはアーティスト、選手の「甘え」だな(笑)。でも、ワガママを許してしまう気持ちもわかるかも。自分が選手だったら……というふうに感じてしまう部分も理解できるからね。


名選手名監督にあらずの真相は?

笹木 “名選手名監督にあらず”と言われますよね。
小林 現役時代に目立った活躍がない、ほとんどプロとしてプレーしていない人が、監督として成功を収めるケースは少なくないよね。
笹木 モウリーニョはそうでしたね。
小林 現役の経験がないからこそ、すごく緻密に戦術などを考えるだろうし、細かい指導をするんだと思う。そして、シビアな目でサッカーを見ているというか。同時にその指導にもブレがない場合が多いよね。
笹木 実際、僕が仕事をしたプロデューサーさんも、アーティスト経験のない方は、やっぱりブレがなかったですね。遊びがないかもしれないけど、そのぶん、芯がしっかりとした作品ができました。
小林 たとえば、まったく現役選手としてのキャリアがなかったモウリーニョは、指導者になった当初は、選手からの信頼を得るのに時間がかかったはず。それでも、自分の哲学を貫き、結果を残したからこそ、今の地位があるんだと思う。もちろん頑固一辺倒じゃなくて、その選手やクラブの状況に応じた臨機応変さも持っているんだろうし、自身の戦術や指導方法もキャリアに応じて進化させていく。ぶれない姿勢と同様にそういう柔軟性も持ち合わせているはず。
笹木 名選手だった指導者というのは、選手の気持ちを理解できるわけですよね。
小林 そう。だから選手のモチベーションを上げるのは上手だと思う。選手もそういうキャリアの指揮官をリスペクトするからね。ただ、細かく指導するという部分で、力を発揮できない監督も多いんじゃないかな。チームが上手く回っているときは良いけれど、躓いたときが大変……みたいな。
笹木 前回のW杯のアルゼンチン代表のマラドーナ監督を思い出しますね(笑)。
小林 そういう一般論があるなかで、アトレチコ・マドリーのシメオネ監督やバイエルン・ミュンヘンのグアルディオラ監督とか、とんでもない名選手が名監督になっているのは、うれしいよね。
笹木 今季のシメオネ率いるアトレチコの快進撃は楽しかった。
小林 僕のイメージだとシメオネは、もともとはテクニシャンだったと思うんだよね。でも、18歳で代表入りし、マラドーナという強烈な個性と出会ったことで「自分が生き残るには、技術で勝負しても勝てない」と察し、闘争心や激しさという自身の武器を再確認し、さらにそれを磨き、伸ばしていったんだと思う。そんなふうにチームで生き残るために、必要なことに気づけるのもひとつ才能。そういう頭の良さや、引き出しの多さが、監督としても、生かされていると感じるなぁ。あとシメオネのスタイルは、アトレチコというクラブにも合っているよね。


23人のメンバーからわかる
ザッケローニの覚悟


笹木 シメオネ監督のこれからが楽しみですよね。さて、楽しみと言えばW杯の日本代表! ザッケローニ監督も現役のキャリアがほとんどない監督。
小林 うん。だから、その分、本当にブレがない。W杯メンバーに選んだ23人を見ても、「この4年間積み上げたサッカーをブラジルで見せる」という信念が伝わってくるよね。
笹木 23人のメンバーから、豊田が外れたのは、高さ勝負はしないということですよね? ショートパスを繋いで、攻めていくというスタイルで戦うと。
小林 多分そういうことだと思う。高さのあるフォワードは、監督としてはメンバーに置いておきたい武器。1点のビハインドを追いかけているときに、最後の数分間をパワープレイで勝負できるのは、大きいからね。だけど、現状、世界のチームを相手に通用するパワープレイができる日本人フォワードがいるのか? という判断もあったとは思うけど、一番大きいのは、「今まで積み上げてきた自分たちのサッカーへの自信」だと思う。そしてその決断は、「どんなに追い詰められても、パワープレイはしない。自分たちのサッカーをやり通すんだ」という選手たちへのメッセージでもあるんじゃないかな。
笹木 すごい決意の強さですね。細貝を外して、青山を招集したのにも強い意図があるように思えてきました! 
小林 単純に思うのは、ボールを握りたい(保持したい)ということだと思う。もちろん選手のタイプを見極めたうえで、チーム編成を考えたときのバランスもあったと思う。でも、相手の攻撃を潰す能力に長けた細貝ではなく、攻撃を組み立てるパスを配給する青山の能力を買ったというのは、最終的に豊田を外した理由と同じなんじゃないかな。「自分たちらしいサッカー」で勝負するという自信と覚悟の表れだと思うよ。
笹木 その代表のサッカーについてはどう思いますか?
小林 シュートパスを繋いで、連動していくというスタイルは、日本人の強みを表現できるサッカーだよね。それを世界の舞台で表現することが大事だし、結果はどうであれ、それができれば、先に繋がるはずだから。

<構成/寺野典子>

-------------------------------------------------------------------------------------------
●笹木ヘンドリクス/1988年1月8日札幌市生まれ。ヴォーカル&ギター。" ヘンドリクス " メンバーたちと共に、ライブシーンで話題を集めている。ロックの王道を背骨にしながらもあらゆる“グッドテイスト”を欲張りに取り込こもうとする雑食系ギターサウンド。言葉が突き刺さる歌とメロディラインがインパクトを残してくれる。6月11日、シングル「星のかけら」でメジャーデビュ―決定! 東京、名古屋、大阪、札幌フリーライブとサイン会も行われます。ライブ情報などは、笹木ヘンドリクスOFFICIAL SITEへ。


●小林慶行/1978年1月27日埼玉県生まれ。桐蔭学園、駒沢大学を経て、1999年東京ヴェルディでプロデビュー後、大宮アルディージャ、柏レイソル、アルビレックス新潟に在籍。2011年にはJ1通算300試合出場を達成。2013年に現役を引退し、現在は指導者や解説者として活躍中。