チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督が“スペシャル・ワン”ならば、ユナイテッドのデイヴィッド・モイーズ監督は“Chosen One(選ばれし者)”。前任サー・アレックス・ファーガソンの強い推薦があったからこそ監督の座を手に入れた、という皮肉がたっぷり込められた呼び方だが、今のユナイテッドを見ればモイーズ監督がそう揶揄されても仕方あるまい。香川が苦境に立たされていることが日本では注目されているが、もうひとり、モイーズ監督から干されている人物がいる。今シーズンより選手兼コーチを務めるベテランのライアン・ギグスだ。

ギグスを“オールド・トラフォードの亡霊”と一部サポーターが冗談で呼ぶほどベテランMFの出番が激減しているが、これこそモイーズ監督の迷走ぶりを如実に表している。マンUひとすじでプレーする現在40歳のギグスは、長年チームの中核を担ってきた実績があり、選手たちからも絶大な信頼を得ている。そんな彼の存在感がスタジアムの内外で薄れている現状に、悲惨というよりむしろ破滅的とユナイテッド終末論まで出始める始末だ。

今年に入って14試合中7試合と負け込んでいる状況を鑑みれば、モイーズ監督は今こそギグスを頼るべきなのに、指揮官は彼をサイドラインへ追いやっている。将来を見据えたチームを作るという固い決意からギグスを起用しないのかもしれないが、勝者のメンタリティとは、ギグスのようなベテランから若い選手たちに引き継がれていくべきもの。モイーズ監督は、彼のカリスマ性を上手く活用すべきだ。

昨年7月に選手兼コーチに就任した際、ギグスはユナイテッドファミリーの一員として自分の経験を積み重ねていきたいと抱負を述べていた。だが、このままでは彼が選手として契約を更新するとは考えにくい。コーチとしてチームに残る道もあるが、ギグスとモイーズ監督は戦術面で意見が対立しているとの噂もある。実際、エヴァトンから引っ張ってきたスタッフ(スティーヴ・ラウンド、フィル・ネヴィル、クリス・ウッズ)が重用されており、コーチとしてのギグスの存在感は薄いといわざるを得ない。

新時代の到来を受け入れてモイーズと共に仕事を続けるか、あるいは一度ブレイクを入れて指導者ライセンス取得に専念するか、ギグスがどのような進路選択をするのか、気になるところだ。