トッテナム・ホットスパーは16日、アンドレ・ヴィラス・ボアス監督の解任を発表した。先月行われたマンチェスター・シティ戦で６−０と大敗し、指揮官に対する批判が高まっていたところへ、15日のリヴァプール戦でまたしても０−５で敗れた結果、クラブが下した決断だった。

しかしながら、更迭の理由は単純に“結果を出せなかったから”だけではない。どのチームにも好不調の波は訪れるものだが、事態が悪い方向に向かった際のヴィラス・ボアス監督の立ち回りはあまり上手だったとは言い難い。

常に批判の矢面に立たされる監督ならば、それらをさらりと受け流す術も必要とされる。GKウーゴ・ロリスが頭を負傷した際の対応の仕方を見ても、指導者としてのプレゼンスをきちんと示せていたのかという疑問が沸く。チェルシーの監督をクビになった時と重なるが、ヴィラス・ボアス監督は状況が悪化するとあっという間に負のスパイラルに陥ってしまう傾向がある。今回もまたクラブを去るという悲しい結末を迎えてしまった。

AVBの後任探しがこれから本格的に始まるわけだが、コーチのティム・シャーウッドが暫定監督に任命されている。現役時代にMFとしてトッテナムに４年間在籍し、2008年にコーチングスタッフとして再びトッテナムに戻って来た人物だ。彼の強みは、トッテナムのあらゆるレベルの選手をすでに知っていること、そしてダニエル・レヴィ会長が好むプレースタイルについても認識していることだ。

レヴィ会長の野望は、チャンピオンズリーグ出場権を得られるリーグ４位内である。今季のプレミアは圧倒的な強さを誇るチームがなく、上位チームが僅差でひしめく混戦模様だ。現在７位のスパーズの順位が浮上すれば、シャーウッドが正式に監督の座を射止める可能性はある。

とはいえ、レヴィ会長が掲げるチャンピオンズリーグ出場の夢を実現させるのは決して容易ではない。CL常連であるマンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、チェルシー、マンチェスター・シティと比較すれば、トッテナムの収入と選手への給料支払い額には大きな隔たりがあるからだ。財政的な観点から見れば、アストン・ヴィラ、フラム、エヴァトン、ニューカッスル・ユナイテッドといったクラブと同ランクのトッテナムが、トップ４入りを果たすのはやはり簡単なことではない。むしろ、マイケル・キャリック、ディミタール・ベルバトフ、ルカ・モドリッチ、ガレス・ベイルといった主力選手たちを失いながらも毎シーズン強豪クラブとして安定した実力を保っていることは称賛に値するのだが。シャーウッド暫定監督が与えられたチャンスをモノに出来るかどうか、見ものである。