「このままでは未来に悪影響が出る」
　中西大介Jリーグ競技事業本部長は、そう熱弁をふるい、2015年から復活するチャンピオンシップこそJリーグの未来を切り開くと語った。
　
　私は1994年から10年間、スタジアムに足を運ばなかった。約10年振りに行こうと思ったきっかけとなったのは、Jリーグラストのチャンピオンシップとなった横浜FM×浦和戦だった。そういった個人的な経験から考えれば、チャンピオンシップを行うことでスタジアムに足を運ぶ層が増えることには同調する。それは、希望的観測ではなく、日本人の“祭り”好き文化からも考察できる。
　
　しかしそれだけに、チャンピオンシップとポストシーズン（仮：クライマックスシリーズ）を行うとなれば、日本代表戦のように、“クライマックスシリーズだけを見る層”が生まれることが容易に予測できる。
　
　つまり、結局は、いかに日常のリーグ戦に足を運ばせるかという長年の課題の解決にはつながらない気がする。
　
　私は、その課題の解決のひとつになるのが、スタジアム改革だと考えている。
　というのも、私が10年間スタジアムにいかなかくなった理由に、スタジアムの「質」の低さがある。チャンピオンシップ前に観戦した最後の試合、国立競技場のゴール裏からは試合がほとんど見えず、かつガラガラで“祭り”感はゼロ。そうなれば、当然、再び観戦したいという気持ちにはならず、一緒に観戦したサッカー部員30人全員がスタジアムから遠のいている。
　
　だが、このことから逆説すれば、スタジアムを整備することで、観客動員数をあげることは十分に可能ということだ。

　その最たる例が、ホームスタジアムを市原臨海競技場からフクダ電子アリーナに移したジェフユナイテッド市原千葉である。
　
　現在は、J2降格から4年が経ったこともあり、平均観客数は9,000人と減少したが、2009年までは14,000人を集めていた。市原臨海競技場時代は7,000人というのを考えれば、倍の数字である（もちろん、オシムサッカーの魅力もあるだろうが）。
　
　フクアリは、サッカーを観戦するための専用スタジアムというのに加え、雨でも試合を快適に観戦できるように屋根も設けられている。また、アクセスも千葉駅から一駅先の蘇我駅で、そこから徒歩10分という好立地である。
　
　このような「質」と「立地」が揃ったスタジアムは、残念ながら日本では稀有だ。
現在、観客動員数を伸ばしているドイツブンデスリーガも、過去には「質」の部分でJリーグと同じ問題を抱えていた。2000年は陸上トラック付きのスタジアムが11で、サッカー専用が７しかなかったが、ドイツW杯を期に、サッカー専用を15にする改革を行った。それに伴い、2000年は30,000人台だった観客が、45,000人にも伸びた。

　このように、未来を考えるならば、スタジアム建設は避けて通れない。

　もちろん、すぐにスタジアムを建てられないことは百も承知だ。スタジアムに「質」と「立地」を求めれば、莫大な資金や政治力が必要になる。現在のJクラブに、そんな体力のあるチームはない。
　
　だからこそ、「未来のために」Jリーグ事務局が今から取り組まなければいけないことではないか。
　
　Jリーグには『自治体・ファン・サポーターの理解・協力を仰ぎながら、世界に誇れる、安全で快適なスタジアム環境を確立していきます』という活動方針があったはず。

　サポーターに、今回行った一手『2ステージ制』を受け入れてもらうためにも、本丸となる改革、“スタジアム改革”を進めて欲しい。

◇著者プロフィール：石井紘人　Hayato Ishii
C級ライセンス・三級審判員の資格を持つ。自サイトFootBall Journal（fbrj.jp）にて『審判批評』『インタビュー』『Jリーグ紀行』『夏嶋隆コラム』を更新。審判員は丸山義行氏から若手まで取材。中学サッカー小僧で『夏嶋隆氏の理論』、SOCCER KOZOで『Laws of the game』の連載を行なっており、サッカー批評などにも寄稿している。著作にDVD『レフェリング』『久保竜彦の弾丸シュートを解析』。ツイッター：@FBRJ_JP。