リオネル・メッシのある行動が紙面を賑わせた。その要因は? 彼の性格は? 報道のされ方は? さまざまな角度から検証する。

メッシに対する一般的なイメージは、物静かとか優しそうなど、好ましいものだろう。現にバルセロナなどの現地の事情通によると、パーティーなどでは端の方で静かにしていることが多く、素朴で控えめな性格であるとのことだ。試合中だけを見ても、激しいタックルを受けてイライラしているようなときもあるにはあるが、怒鳴り散らすなどという姿は見たことがない。

ただ一方で、メッシには勝ちに対しての異常ともいえる執念があるのも事実だし、大の負けず嫌いでもある。アルゼンチン代表の負けた試合後などを見る限りメッシは淡々としているし、勝った試合の後と変わらないように見える。しかし、負けた試合後のロッカールームで号泣していたエピソードなどからしても、彼は熱い心の持ち主であることが伺える。そうでもないと、バロンドールを4年連続して取れるような選手にはなれないだろう。

そんな彼が今回珍しく騒動を起こした。

事の始まりは、2013年1月30日、レアル・マドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウで行われた今年最初のエル・クラシコ。コパ・デル・レイ(スペイン国王杯)の準決勝1stレグ、後半5分にバルセロナがセスクのゴールで先制、レアル・マドリードも81分にバランのヘディングシュートで同点として、引き分けとなった試合だ。

騒動はその試合後に起きた。メッシがサンティアゴ・ベルナベウの駐車場でレアル・マドリーのディフェンダー、アルバロ・アルベロアに対して、「Bobo」(意味は間抜け)などの侮辱するような言葉を浴びせた。さらに、アイトール・カランカ・アシスタントコーチに対しても「何を見ているんだ! 黙れ! モウリーニョの操り人形のくせに!」と侮辱的な言葉を発したという。前者のニュースはスペイン最大のスポーツ紙だがレアルびいきの「マルカ」が伝え、後者は同じくマドリードの他のメディアが伝えた。

ここで問題になるのは暴言を吐いたのが、試合中ではないということだ。どんな選手も試合中は熱くなり、ピッチの外とはまるで違う人間になるから、試合中のこととしてあまり大きな話題にはならない。だが、今回はピッチ外であったので、宿敵「マルカ」としては「大問題」にしやすかったのだ。

さらに、レアル・マドリーのカジェホンが、アイトール・カランカへの暴言を聞いたと記者会見で発言。彼は、試合後はみんな興奮状態であるとし、ときには後悔してしまうような言葉も発してしまう、とサッカー選手メッシに気を使いながらも事実を裏付ける証言をし、マルカ陣営を後押した。

一方、彼の母国、アルゼンチンの「オレ・ディアリオ・デポルティーボ」ではメッシを擁護するような記事を、バルセロナの「カタラン・チャンネル」のニュースと共に掲載。そのニュースではレアル・マドリーの選手たちを偉大な狩人たちと皮肉を込めて紹介、メッシが次々とレアル・マドリーの選手たちにファウルを受けるシーンが流れる。

これを見ても解る通り、スペインでは、たとえ新聞報道といえども、公正平等よりもマドリード対バルセロナという二大都市の争いが反映される。だから、マドリードではメッシが暴言を吐いたことになり、バルセロナではそんなことはなかったかもしれないのだ。

当然のことながら、バルセロナ側は今回の騒動を否定して、メッシ本人も騒動に対しての発言はないが、エル・クラシコであるがゆえにこのような行動を取ってしまった可能性は大いに考えられる。なにしろ2011年のエル・クラシコでメッシは観客に向けてボールを蹴り込んだこともあるからだ。あのメッシにしても普通の試合とは違うなにかが、起きてしまうのだ。今回の騒動も、普段のメッシであるならこのような行動はとらないだろう、というのは誰もが思うところだろう。レアルにしても、2011年にモウリーニョ監督がバルセロナの現監督ビラノバの目を指で突いたり、ペペが倒れているメッシの手をわざとふんだりしている。

エル・クラシコは二つの都市の公然の戦いの場所といえる。二つの都市の歴史、政治的背景すべてがエル・クラシコには詰まっている。それはサポーターだけでなく、選手、監督、関わっている一人一人の特別な試合なのだ。なにしろ、あのアルゼンチン人のメッシさえ熱くなるのだから。

クラシコの2戦目、コパ・デル・レイ2ndレグは現地時間、2月26日21時キックオフだ。バルセロナホームのカンプ・ノウにレアル・マドリーを迎えての一戦となる。リーガ・エスパニョーラでは完全に独走状態のバルサ、現時点ではそれから大きく離された3位のレアル・マドリー。どちらも負けられないのは百も承知だが、レアル・マドリーとしては、リーガの優勝がほぼ厳しい状況のため、なんとしてもコパ・デル・レイのタイトルが欲しい。通算成績もレアル・マドリー88勝、バルセロナ87勝、引き分けは47回とほぼ五分五分、引き分けの無いカップ戦であり、さらに「試合後の遺恨」もあるだけに、面白い戦いになることは間違いない。

【文/柴原貴彦】