夏場が近づき、Ｊリーグでは開幕ダッシュに失敗したＧ大阪を除くＡＣＬ出場組が、徐々に順位を上げてきた。特に好調同士の対戦で、改めて潜在能力の高さを見せつけたのが名古屋だった。

　国立でのアウェイ戦で、柏を下したストイコビッチ監督は語った。
「柏は前年度のチャンピオン。なかでもファンタスティックな中心選手のレアンドロに仕事をさせなかった。これは大きな勝利だし、ようやく開幕を迎えた気分だ」

　欧州基準で眺めれば、名古屋は実にオーソドックスなサッカーをしている。常に両翼がライン一杯に張り出し、長短と高低自在のパスを駆使して攻略して行く。すっかりショートパスでの繋ぎに傾いた日本では、異質であり新鮮に映る。

　まず名古屋が、このスタイルを貫けるのは、適材適所で質の高い選手を揃えているという大前提がある。ＣＦには高さがあり足もとも確かなケネディがいて、両ウィングの永井、金崎は切れ味鋭い突破を見せる。さらにアンカーには強靭でダイナミックな展開が出来るダニルソンが君臨し、もちろんＣＢ２枚（闘莉王、ダニエル）も高さと強さを兼ね備える。小川、藤本と２人の攻撃的ＭＦは機を見て果敢なプレスを実践し、田中隻、阿部もタイミング良く押し上げていく。

　つまり試合の状況に即して、相手の最も嫌がることを実践できている。全体が右サイドに寄れば、ダニルソンが一発で逆に振ってしまうし（そこから先制点が生まれた）、相手が押し上げながら陣形を整えていれば、最終ラインからでもケネディにつけてくる。時にはＣＢが中盤でビルドアップに参加し、さらにはゴール前まで進出していくのも特徴だ。

　確かにポゼッションを高めようとするのは、世界的な潮流だ。しかしＪリーグを俯瞰すると、「繋ぐ」というキーワードを掲げた途端に、場所や状況に関わらずグラウンダーのショートパスという概念に縛られ、袋小路にはまっているチームが少なくない。ショートパスに拘るあまり、サポートが近づき、前線の動きも小さくなり、結局は硬直化してしまう。例えば、Ｊ２では断トツで本命視された京都が苦戦しているが、せっかく個々が圧倒的なスキルを持ちながら、パス回しの傾向をすっかり研究され、カウンターを狙われている。

　バルセロナもスペイン代表も決してショートパスばかりに固執しているわけではない。パス回しは速いに越したことはないが、目的は相手を揺さぶりスペースを作りゴールを狙うことだ。
　
　再び永井が五輪で抜けてしまう名古屋。しかし今後も柏戦のようなダイナミックな試合を続けられるなら、混戦レースの本命と見ても良さそうだ。