まず勝利が欲しい。しかし出来れば、独自のスタイルで勝ちたい。それが監督の性(さが)なのかもしれない。

ましてザッケローニ監督は、セリエAのウディネーゼ時代に3−4−3で旋風を巻き起こし、最優秀監督にも選ばれている。それがビッグクラブ(ミラン)にステップアップする契機となったわけだが、その後は多かれ少なかれフラストレーションを感じていたはずだ。

ミランではスクデット(リーグ優勝)は獲得したが、途中から3−4−1−2に変更している。結局トレードマークの3−4−3では、大きな成功を勝ち取っていない。ビッグクラブになるほど確実に結果が求められるイタリアでは、あまり大胆なチャレンジには踏み切れなかったようだ。

そういう意味で長居でのタジキスタン戦は、今後ザックが日本代表を率いてザックらしく戦えるかどうかの分岐点になりそうだ。グループ内で最も力の劣る相手とのホームゲームである。当然引いてスペースを消してくることが想定され、同時にカウンターのリスクは少ない。前線から人を割きボール奪取を目指す3−4−3というオプションは、本来こういう時のためにある。

おそらくザッケローニ監督が3−4−3に手応えを感じたのは、アジアカップ決勝ではないだろうか。4−2−3−1でスタートしたが、後半10分に右MFの藤本を岩政に交代。真相は「フォーメーションは変えずに左SBの長友を1列前に出し、CBの今野を左SBにスライドさせた」のだが、右SBの内田が高い位置を取れば、そのまま3−4−3に見えた。

その後Jリーグ選抜とのチャリティーマッチ、さらにはキリンカップ2試合とチャレンジを続けたが、キリンカップはともに0−0の引き分け。指揮官からは「3−4−3に強い拘りはない。どこかの試合の、ある状況で出せれば、と試している」との言葉が洩れた。

もし手応えがあれば、どうしても1点が欲しい北朝鮮戦(ホーム)などは切り替えてみても良かったのだろうが、4−2−3−1で最後まで押し通している。結局現状ではベストメンバーが揃えばなんとか機能するが、採用しているチームが少ない関係もあり、内田不在時の右MFや、3トップの人選が難しい。

代表チームの少ない拘束時間を考えれば、これからも3−4−3を熟成させるチャンスは限られる。タジキスタン戦は、決して難しい試合ではないが、難しいテーマが課せられている。

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